ミツキ 小学校低学年

遊び仲間③

面談を終えて帰る私の足取りは軽く、早くミツキに倉山先生との話を教えてあげたかった。常日頃から私がミツキに言い続けていることが、倉山先生の考えと同じであったことは、大きな励みになった。私がそう感じるのだから、くらやマン信者のミツキにとっては…

遊び仲間②

12月初めの面談で、ミツキの友だち関係について倉山先生に相談をした。まず学校での様子を聞くと、男女問わず大人数でボール遊びをしていて楽しそうだとのことだった。確かに学校は楽しいと言っている。体調を崩して休んでも、少しでも良くなれば退屈して早…

遊び仲間①

数人のいつも同じメンバーで遊ぶのが、ミツキのこれまでの遊びスタイルだった。しかし、夏休み前の面談で倉山先生が「男の子は、3年生ぐらいになると、群れで遊ぶようになる」と言っていた通り、夏休みが明けると毎日10人くらいで遊ぶようになった。 10月に…

倉山先生との面談③

2週間後に控えている運動会のことも、とても心配だった。 「最も心配しているのが、運動会のダンスですけれども、ミツキは付いていけていますか?」 「付いていけていると思いますよ。今回のダンスは、表が緑、裏が赤の扇子を持って踊るんだけど、動き自体…

倉山先生との面談②

「もしかしたら、ミツキは先生の話が聞けていないのかなと思ったことがありまして、お伺いしたいのですが」 掃除の件について、前夜のミツキと私のやり取りを先生に話した。 「ミツキは、先生が伝えたかったことを理解していない、と思うんです」 「うん、う…

倉山先生との面談①

面談当日。ミツキを虜にした倉山先生と初対面。 倉山先生は、アナウンサーの福澤朗さんに似ている。額が広くて頭のはちが張っているところなんかそっくりだ。髪型も似ている。この頭の骨格にベストの髪型なのだろう。 柔らかい口調に落ち着いた雰囲気で「ワ…

倉山先生との面談前日

3年生に進級し、初めてのクラス替えがあった。クラス替えと言っても2クラスしかないので、大人からしたら代わり映えしないように思うが、子どもにとっては大問題だ。担任の先生も替わった。 「よかったよ。野島とまた同じクラスになれた。それからね、新しい…

偉人の母

発達障害についての記事を読んでいると「発達障害と思われる歴史上の偉人」というのをよく目にする。アインシュタインやモーツアルト。最近の人だと、スティーブジョブズの名前がよくあがる。そんな偉人たちの幼少時代は、親や周りを巻き込む困ったエピソー…

結果を受け止める⑤

発達障害についての本を数冊読み、すべきことを実践していくうちに心が落ち着いていった。 ミツキが幸せを感じる生活環境にするには、ありのままのミツキを認めてあげることが必要だ。今までミツキを認めていなかったわけではない。しかし、もう少しがんばれ…

結果を受け止める④

幼児期には誰でもぶち当たる壁だと思っていたが、書き出してみると、やはり困難の連続だったと思う。発達障害なのだと納得せざるを得ないが、それでも胸がざわつくのだ。 そんな私の気持ちに整理をつけてくれたのが、服巻智子著の『子どもが発達障害?と思っ…

結果を受け止める③

さまざまな本を読み進めるうちに、ミツキは学習機能障害(LD)か注意欠陥・多動性障害(ADHD)なのではないと考えた私は、改めて幼児期のミツキの学習状況を思い出してみた。 3歳の半ばごろから簡単な遊び感覚のワークを始めた。まったくできないという訳で…

結果を受け止める②

吉田友子著『高機能自閉症・アスペルガー症候群 「そのこらしさ」を生かす子育て(改訂版)』の中から ・社会性の障害、または人とのかかわり方の 質的障害 ・コミュニケーションの質的障害 ・社会的イマジネーションの質的障害・あるいは 柔軟性のにがて ・…

結果を受け止める①

発達障害について何も知らないからこんなにも辛いのだ。ならば知ることから始めなければ。くよくよして笹本先生に八つ当たりしている場合ではない。 私は、発達障害の本を読むことから始めた。このとき、私の中で重要だったことは、発達障害の「原因」という…

WISC-Ⅲ

月に1度、スクールカウンセラーの笹本先生のもとを訪ねた。 「うん、うん、それはお母さん大変でしたね。でも、その対応でいいと思いますよ。その方法でまた様子を見てみましょう」 笹本先生にそう言ってもらえると、1か月分の心のつかえがとれた。しかし、…

数の概念

ミツキは、2年生に進級しても、指を使って算数の計算をしていた。 「7個のブロックと5個のブロックを足してみるね。7を10にするには、5個のブロックを3と2に分けて、3を7と合わせるよ。そうしたら、10になるよね。この10に残った2を足をして、12。だから、答…

少年ミツキ

2年生に進級すると、ミツキは急速に少年へと成長し始めた。 「ミっちゃんて呼ぶのを止めてくれないか。これからはミツキって呼んでくれ」 いつかそんな日がくるだろうと思ってはいたが、やはりさみしいものだ。少年になろうとしている成長は分かるし、うれし…

奔走あるいは迷走

笹本先生のカウンセリングを受けたことにより、私自身の言動は間違っていなかったのだと、自信を持つことはできた。しかし、ミツキに対しての悩みは、解消されなかった。 学習面での不安。どうしようもなく勉強ができないわけではないが、気分次第で出来具合…

小学校初めての面談

1年生の夏休み前に行われた、面談でのこと。 「葉野君は、授業中によく質問してくるのですが、その内容が誰にでも分かるようなことばかりなので困ります。他の子どもたちも不思議な目で見ています」 例えば「バラバラってどういうこと」など誰でも分かること…

消しゴム事件②

翌朝悩んだ末に、次のように書いた連絡帳をミツキに持たせた。 「お友だちのことでの相談の件ですが、ミツキと話合い、ひとまず解決いたしましたので、お電話は結構です」 ずいぶん勝手な言い分だが、先生の手を煩わすまでの話ではないと思ったのだ。しかし…

消しゴム事件①

夕方いつものように、ミツキが宿題を始めたので、様子を見ていたときのこと。筆箱を開けると、粉々にちぎられた消しゴムが出てきた。 「なにこれ。ミっちゃん、こういうことしちゃダメだよ。消しゴムが泣いてるよ。消しゴムにも心があるんだよ」 「オレがや…

勇気100%

6月の第一土曜日に運動会が開催された。まだ入学して間もない1年生にとっては、初めての見せ場だ。そして、ミツキにとっては、立ちはだかる高い壁となりそうだ。想像するだけで、私は心配を募らせた。 リオを遊ばせる名目で、小学校の隣の公園へ行った。真の…

漢字の宿題②

文字に対する石倉先生の一生懸命さは伝わってきたが、2つ受け入れがたいことがあった。 1つは、テストで答えは合っているのに、文字の形が悪いと言うことで、各1点ずつ減点されたこと。決して読めない字ではない。これにより、ミツキは1年生の間、たったの1…

漢字の宿題①

小学生の学習時間は、学年×10分と言われている。これは果たして本当なのだろうか。 小学校に入学して1週間もすると、宿題が出るようになった。まずはひらがなの練習から始まり、あっという間に漢字へと進んだ。 十字リーダーの入った枠の中に文字を書くのだ…

1年2組

「1年2組担任の石倉真美です。先生はみなさんと同じ1年生です。どういうことかと言うと、私は、先生1年生なのです」 先生1年生と自己紹介する石倉真美先生は、私と近い世代に見えた。それもそのはず、石倉先生は、自衛官と塾の先生を経て小学校教諭になった…