結果を受け止める③
さまざまな本を読み進めるうちに、ミツキは学習機能障害(LD)か注意欠陥・多動性障害(ADHD)なのではないと考えた私は、改めて幼児期のミツキの学習状況を思い出してみた。
- 3歳の半ばごろから簡単な遊び感覚のワークを始めた。まったくできないという訳ではないが、なかなか先に進まない。普段の生活では、昼寝せずに外で何時間走り回っても元気にしているが、ワークを始めると急に目がうつろになり、1ページ約30分間でぐったりして3時間は昼寝をした。
- 4歳の中ごろ、ワークではひらがなの学習が始まっていたが、ミツキは覚える気配がなかった。ミツキの友だちは、あひるの絵と「あ」という文字が、リンクして覚えたそうだ。しかしミツキにとって、あひるの絵は、あくまでも「あひる」であり、「あ」という文字は記号にしか見えないようで、リンクしない。それでは、記号として覚えさせてしまおうと、フラッシュカードをつかった。「あ」とだけ大きく書かれた紙を10秒間見せる。次は「い」。次は「う」。結果、各文字10秒ずつで、1日5文字ずつ楽に覚え、10日間で読めるようになった。
- ひらがなを読めるようになったが、文字を記号としてとらえていることには変わりなく、「あ」を「あ」と発音しているだけだった。つまり「あひる」は「あ」「ひ」「る」と発音しているだけで、意味はつながらない。単語として読めるようになるまで半年かかった。
- 単語が読めるようになると、次は文章である。ワークの文章問題を読ませてみるとすらすら読めるが、語尾を勝手に変えてしまう勝手読みが目立った。また、読み終わってから「なんて書いてあった」と聞くと、まったく文章問題の意味を理解していなかった。文章問題になると体力を消耗し、相当疲れるようである。怒りっぽくなるので、サポートが必要だった。
- 4歳半ばごろ、数を数える練習を始めた。「1個に1対応」が難しかった。りんごが3つあったとする。1つ目のりんごを指さして「 1 」。2つ目のりんごを指さして「 2 」。3つ目のりんごを指さし「 3 」。これができない。同じりんごを何度も指さして「12345...」と永遠に数え続けた。
- 1個に1対応ができるようになったあとは、数えた後に「何個あった?」と聞くと、数を忘れていた。これは文章の意味が分からなかったのも同様だが、「短期記憶」ができないからだと思う。
- 1年生のころは教科書がすらすら読めなかった。
一字一字たどりながら読む「逐字(ちくじ)」
語尾などを変えて読んでしまう「勝手読み」
単語や文章を飛ばしてしまう「飛ばし読み」
小さい「つ」や「よ」などの促音や拗音、漢字の読みが苦手。 - 小学校に入学し、足し算も初めは苦労した。数の概念が理解できなかった。トロール先生の平面タイルで、数の概念を克服。
- 図形問題は、落ち着きがなくなり怒りっぽくなった。
- 文字が上手に書けない。
- 話が長く、話題がいつの間にかそれてしまったり、話の順序が前後してしまったりする。
- 聞こえているはずなのに「聞きもらし」や「聞き間違い」が多い(学校で指摘された)
- 全体活動でいつもみんなより行動が遅れる
- 簡単な「宿題」のはずなのに何時間かかっても終わらない
- 書く力はあるのに作文がなかなか書けない
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悪ふざけをしてまじめに課題に取り組まない。苦手なことを避けようとして不真面目な態度を取る。
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話された言葉の復唱ができない。
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話したいことだけ話す。相手の言葉をさえぎるように、自分のことばかりしゃべる。
すべてのことが一度に押し寄せたわけではなく、ひとつひとつインターバルを挟みながら乗り越えてきたので、少し大変だった程度にしか感じていなかった。けれども、こうして思い返すと次から次へと出てくるので、やはり大変だったのかもしれない。
今までこうしてやり方次第で乗り越えてきたのだから、これからも試行錯誤していけば何とでもなるとも思う。定型発達の子どものようにはいかなくとも、ミツキにあったやり方をすれば、あっという間にクリアできるのだ。
ミツキに「自分はやればできる」という自信をつけさせてやりたいと思った。