漢字の宿題①

 小学生の学習時間は、学年×10分と言われている。これは果たして本当なのだろうか。

 小学校に入学して1週間もすると、宿題が出るようになった。まずはひらがなの練習から始まり、あっという間に漢字へと進んだ。

 十字リーダーの入った枠の中に文字を書くのだが、ミツキの文字は、枠内で暴れていた。

 5時に遊びから帰宅し、5時半から宿題を始める。まずは、ミツキひとりでノートに練習。出来上がったものを見ると、とても読めたものではない。消して書き直しを促す。今度は消しゴムの扱いが難しい。文字が濃く、なかなか消えない。強く消しゴムを動かすので、消しゴムがすぐに折れる。紙がぐしゃぐしゃになる。

 当然ながら私が消すときれいに消える。時短のため、文字を消すのは私の役目になった。消したところに再度書き直すよう促す。きれいに消えてはいるが、筆圧が強いのでうっすら跡が残っている。だから、その上をなぞってしまう。もう一度私が消し、今度は付きっきりで指導する。

「横にスーッと行って、はい、ストップ」

 こうして何度も何度も直すと漢字の宿題だけで、1時間かかってしまった。そのあと、通信教材のワークを見開き1ページやるので、7時を回ってしまう。

 幼稚園のころまでは、5時半入浴。6時半夕飯。1時間寛いで8時半就寝だったが、そうは問屋が卸さない。7時半入浴。8時食事。満腹状態で9時就寝。

 ミツキも辛いが、4つ年下のリオも辛い。お腹が空いて泣くので、ちょっとだけおかずを食べさせる。7時前に眠くなる。入浴の時間に起こされて大泣きしながら入浴。8時食事。満腹状態で9時就寝。

 絵本の読み聞かせをしていると、疲れ切ったミツキはウトウトしはじめる。読んでいる私も目がしょぼしょぼしてくる。ところが、少し寝たリオは、目がギンギン。誰にも相手にされないリオの、一人プロレスが始まる。ベッドの上でドッタンバッタンのた打ち回る。リオを抱え込み10分ほどすると、子どもたちの寝息が聞こえてきた。

 苦労して宿題をやっていくのだが、先生に提出後、返ってきたノートは、赤ペン修正だらけ。これをまた消して、修正個所をなぞらなくてはいけない。もちろん、その日の新たな宿題もある。

 時短のため、初めから付きっきりで宿題をするようになった。何度書いても、文字のバランスがうまくいかなかった。特に難しいのは、「多」のように斜めの線だらけの文字で、バランスが難しかった。

 何度も書き直すと投げやりになり逆効果なので、やり直しは3回までと決めた。

 「明日は先生の赤ペンがないように書き直そう」

 2回目まではそう促すが、3回目の文字がどうであろうと、終了。

 それでも粘り強く回を重ねるうちに、だいぶバランスがよくなった。

「ミっちゃん、がんばったね。今日の字、とってもきれいだよ。明日は直しはないね」

 返ってきたノートを見て、親子で愕然とした。当たり前のように全てが直されていた。

 初めて文字を習ったときにきれいに書く習慣をつけるのが望ましいことなのだということはよく分かる。それは正しい。しかし、ミツキにはしんどかった。

 ある日、同じクラスのお母さんと立ち話をしていて、漢字の宿題の話になった。そのお母さんはクラスに知り合いが多く、どの家庭でも漢字ノートの修正に苦労していると教えてくれた。

「ミっちゃん、漢字の直し、どんなにがんばっても直されてしんどいよね。でもね、みんなも直されてるんだって。みんなもしんどいけどがんばってるんだって。それにさ、先生もそうとうがんばってみんなの漢字を直してくれてるってことだよね。先生は1人で30人分直しているんだものね。ありがたいよね」

 がんばるしかなかった。

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