遊び仲間①

 数人のいつも同じメンバーで遊ぶのが、ミツキのこれまでの遊びスタイルだった。しかし、夏休み前の面談で倉山先生が「男の子は、3年生ぐらいになると、群れで遊ぶようになる」と言っていた通り、夏休みが明けると毎日10人くらいで遊ぶようになった。

 10月に入ったあたりから、ミツキの様子がおかしくなった。学校から帰ると毎日のように元気に飛び出して行き、4時半のチャイムでは帰らず、5時過ぎになってようやく帰ってくる。めいっぱい遊んでいるので、さぞ楽しいかと思いきや、悲しげな表情を浮かべている。

 話を聞いてみると、学校の中ではみんなと楽しく遊べるのに、放課後遊びとなると楽しくないという。

 毎日10人くらい男子と遊んでいるが、そのメンバーの中に2人の強いボス的存在の男子が入ると、ミツキだけのけ者にされてしまうのだそうだ。 

 例えば野球をしようとなっても、一向に自分の打順が回ってこない。あるいは、ボスが「これおもしろいよ」と言って何かをやり、みんなも1人ずつ順番に真似をするが、ようやくミツキの番になったときには、ボスが「あっちに行こうぜ」と言い、みんなで行ってしまうのだそうだ。

 ボスが2人ともいない日は、ミツキにとってはパラダイスでとても楽しく過ごせるのだが、どちらか一方が入ると、たちまちみんなもボスに引きずられて、ミツキに冷たくなるのだという。

 いつの時代も変わらないよくある話なので、情景がはっきりと浮かんでくる。こんなとき、どうしたらいいのか。私の考えはひとつ。帰ってきてしまえばいいのだ。自分は嫌な思いをしているのだと、相手に伝えることが大事だと思う。はっきりと伝えた上で、相手がどんな風に思うか。悪いことしたなと反省するのか。むかつく奴だと遊んでくれなくなるのか。

「自分の気持ちをちゃんと受け止めてくれる人は、本当の友だちになれるよ。受け止めてくれない人は、別にもう友だちでなくてもいいじゃない。はっきり言うのって勇気がいるけど、やってみな。ママの経験上、捨てる神あれば、拾う神ありなんだよ。自分の気持ちに寄り添ってくれるお友だちが、必ず現れるから大丈夫だよ。このままだと、何も言い返してこないミツキには、なんでも言っていいと思われ続けてしまうよ」

 毎日のようにミツキに言い続けるも、何も変わらない日々が続いた。「今日も辛かったけど最後まで帰らずに我慢した」と聞くたびに、胸が締め付けられると同時に、ミツキに対する憤りを感じた。

 11月の終わりごろ、2,3日遊びに行かずに家で一緒にゲームでもしようと私は提案した。そのころのミツキは、本当に疲れきっていたので、あっさりと承諾した。滅多にやらないwiiをセットして、ミツキとリオの3人で大声を挙げながら楽しんだ。
 しかし、窓の外から聞きなれた声がするたびにゲームは中断され、ミツキはベランダから外の様子を伺った。友だちと遊ぶのがなによりの幸せなのだなと思うと切なかった。

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