サプリ一時停止

 栄養療法を始めて4か月、家でも学校でも徹底してやってはいるが、学習面・集中力・ヤル気に劇的な変化は一切なかった。しかし、花粉症が例年より軽く済んだことや、爪の表面の筋がなくなったことや、ニキビや口内炎ができにくくなったことは確かだった。お肌が気になる美容男子としては喜ばしいことで、意欲的に取り組んでいた。

 本人が意欲的なことはありがたいことなのだが、私の期待通りにいかないことは、どうも気にいらなかった。中間試験も散々な結果だったのだ。

 また、ミツキが学校の体育の授業でプールに入らないことも気にいらないことの1つだった。小学生時代からミツキは、寒いことを理由にプールの授業をサボろうとした。入ってもすぐに上がって見学体制になった。泳げないわけではない。家族で海に行くと、勝手に沖に向かって泳ぎだすので目が離せなかった。学校のプールは梅雨の寒い時期でも入らなければないことや、自由に泳げないことが嫌なのだそうだ。

 中学では毎回見学。筆記試験で燦燦たる点数を取り、授業も見学では、通信簿に「2」がついて当然だ。むしろ「1」でないことに、先生の愛を感じる。

 食費とサプリメントで家計を圧迫しているというのに、相変わらずやりたくないことから逃げるミツキ。お肌への関心と薬と病院好きが高じて、サプリメントは忘れずにせっせと飲む姿を見ると苛立ちを感じた。

 私だって頭では分かっている。腸内環境が整うことによって肌や口内や爪のトラブルがなくなり、花粉症も改善した後、これから脳アレルギーの改善がみえてくるのだと。

「プールに入らないなら、水着代5,000円返せ」

「今、1,200円しか持ってないから無理」

「え! 2週間前に誕生日祝いでたくさんもらったばかりじゃん。何に使ったの?」

「分からない」

「小遣い帳つけろ!」

 最悪なことに、苛立つままに夏休みに突入。

 夏休みに入ってすぐに三者面談があった。担任は、中学3年生の息子さんをもつ同年代の女性の先生で、木本先生といった。

 友だちとの関係は良好で、授業中も静かにしていると、木本先生は話してくれた。以前より落ち着いているようだとホッとした。ところが、ホッとしたのも束の間。

「進学ということでいいかな?」

 木本先生が真面目に質問してきた。これは、つまり成績が悪すぎてこのままでは進学は危ういということだろうか?

「はい。進学で」

 心なしか声が小さくなる。

「夏休みは、復習してね。葉野くんは、補習授業の希望をしているね。出席してね」

「はい」

 ミツキの返事が小さい。ちょうどその日、午前の補習授業をサボったばかりだった。

 木本先生にミツキがプールの授業を受けなくて困ると話すと、木本先生は知らなかったようで驚いていた。小学校の担任のようになんでも把握している訳ではないのだ。先生がミツキに理由を聞いた。

「プールの水に浸かりたくないんです。家のお風呂でも一番風呂以外は湯船に浸かりません」

 予想もしなかった答えが返ってきた。ミツキの自分勝手さに心底腹が立った。

 温泉は入るだろうが! 学校以外のプールは入るだろうが! 海も入るだろうが! 毎日毎日シャワーをジャージャー使いやがって! おまえのせいで、水道代が5,000円も上がったんだぞだぞ! 金返せ! 

 このとき私は決心した。栄養療法は続けるが、サプリメントはもう買わない!

 実は、1週間程前からサプリメントをきらしていた。早く注文しなければと思いつつ、嫌気がさしていたのだ。

 どうせ、家で自主的に学習するわけない。夏休み中は、サプリメントも休みたい。そんな風に思っていたのだ。

 サプリメントを止めることで、何か変化があるのか。サプリメントを飲んでも私の期待する変化がないからこそ、飲まない場合の変化をみたかった。

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