葉野ミツキの育て方

そんなトリセツ、あったらいいのに

高校見学①

 2年時に2校と3年時で5校、合計7校の高校見学をした。

 初めて訪れたのは、公立のA工業高校だった。近隣の工業高校の中で最も生徒が落ち着いていて、就職率の良い、人気のある高校だった。私の高校時代は、工業高校といえば不良のたまり場で、良いイメージはなかった。しかし、校内のいたるところに展示された作品のクオリティーの高さに驚かされた。むしろ、ミツキに入学して欲しいと思ったほどだ。ところが、ミツキを振り返るとげんなりした顔をしている。

「オレ、この学校は無理だ。オレの不器用さ知ってるだろ? 毎日物作りは無理だ」

 確かにその通りだと思った。

 次に訪れたのは、公立の普通科B高校だった。相当がんばらないと無理な中堅高校だったが、まだ2年生の夏なので、目標にできたらと思ったのだ。30名ほどの見学者と校内を巡ったあと、ホールで先生から学校の説明があった。

「わが校の生徒は非常にまじめで、やる気に満ちています。みんな自分から率先して行動できる生徒ばかりです。ですから、そうでない人は、わが校に入学すると辛いでしょう」

 この先生は、学校行事の説明を1つするたびに「そうでない人には辛いでしょう」のフレーズを挟んだ。テーブルの向かい側に座っているミツキを見ると、目があった。

 同時に吹き出してしまった。

「オレ、この学校は無理だ」

「だな」

 3年生の夏前の三者面談でのこと。

「葉野くんは、好きなこと嫌いなことがはっきりしたタイプですよね。公立の総合学科はどうですか? 単位式で選択科目を自由に選べます」

 総合学科を知らない私とミツキに、先生がガイドを開いて見せてくれた。

「魅力的ではありますが、中堅高校ですね」

「そうですね。一度見学に行って、気に入ったら、夏休み中がんばって勉強してください」

 3年時の担任の先生は、おっとりした男性の先生だった。1年時の持田先生や2年時の木本先生は、ミツキにとって母親感覚の先生でとても距離が近く感じたが、この先生はなんだか遠く感じた。せっかく勧めてもらったので、夏休みに入ってすぐの説明会に参加した。

 1996年開校のこのC総合高校は、公立高校とは思えない壮大な造りだった。バブル期に設計・建設が進められたのだそうだ。生徒たちは、活気に満ちていた。説明会に先生の姿はなく、すべてを生徒が仕切っている。校内を巡ったあと、コンサートホールのような講堂で卒業生をゲストに迎えての説明会が行われた。卒業生も今にも起業しそうな大学生でハツラツとしている。

「個性と自主性を重んじてくれる学校であり、自分のやりたいことがはっきりしている人は大いに力が発揮できます。自分から行動しない人には、少しきついかな」

 卒業生ゲストの1人が言った。隣に座るミツキの方を見ると、ミツキも私を見ていた。

「オレには、無理そうだな」

「あなたも個性的だよ。もちろんいい意味で」

「でも、自主性もやりたいこともないから」

 納得。説明会が終わり、講堂を出ようと並んでいると、ミツキが耳打ちをしてきた。

「あそこにいる男、うちのクラス委員長」

「へー、大人しそうだけど、積極的なんだね。挨拶したら」

「いや、いい。しゃべったことないんだ」

「あ、そう」

「詳しくは聞いてないけど、給食の内容からすると、アイツもグルテンフリーをしてるみたいなんだ」

「なるほど。それで先生に勧められたんだね」

 一方、数学の先生からは商業高校を勧められていた。数学は唯一好きな教科なので、確かに商業高校がいいかもしれない。だが、2つ問題があった。1つは、公立だと内申が足りないということ。もう1つは、公立の商業高校は女子の人数が圧倒的に多いということだった。ヤローに囲まれておバカなことをワイワイやるのが好きなミツキが、女子に囲まれて息苦しくしている風景が目に浮んだ。

「なんで男子は工業、女子は商業なんだろうね。男女比率の均等な高校はないのかなあ」

 ガイドを検索すると、私立高校でなら男女比率が2対1のD商業高校があることが判明した。アクセスも土地柄も良い。早速、説明会に参加した。

 私立高校出身の私としては、やはり私立校はどこか落ち着く。建物の佇まい、生徒や先生の圧具合。感覚的に一瞬でこの高校を気に入った。ミツキもすっかりその気になっていた。残る問題はただ1つ。

 この学校の推薦を取るには、3教科9以上かつ9教科25以上必要だった。私立高校では、実技教科を2倍にしない。つまり、単純計算で、内申を6上げる必要があった。

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