クリスマス会

 レッドウィングスの部員となって初めての日曜日は、クリスマス会だった。クリスマス会は、近所の公民館の大広間で行われた。
 大広間には、6~7人掛けのテーブルが16卓と高さ50センチほどの舞台があった。テーブルは、4卓ずつ4列に並んでいて、舞台に近いテーブルには、代表・総監督・監督・コーチ陣といった日々の練習を支えている方々がいた。中ほどのテーブルには、1年生から6年生までの部員、後方のテーブルには、母や弟妹がいた。
 ここに集った約90名のほとんどと初対面の私は、初めは少し緊張していた。ミツキの方を見ると、野島くんと楽しそうにしていて、数回の体験練習ですでに他の部員にも打ち解けているように見えた。

 今後のためにじっくりと見ておこうと楽しみにしていた5年生6名によるダンスは、予想以上に上手で驚いた。手拍子で会場全体が盛り上がった。来年は自分たちの番だ。かっこいいとか上手とかでは超えられそうにないので、何か他の部分で楽しませられる演技にしようと、野島さんと話した。
 続いて6年生の女装では、6年生だけでなく、監督コーチ陣からもかり出され、大いに盛り上がった。6年生は体の線もまだ細く、お肌がツヤツヤなので化粧のりもよく、遠目には女の子にしか見えなかった。問題は監督コーチ陣で、こちらは完全に化け物だったが、おもしろかった。総監督が還暦を迎えるとのことで、ドレスの上に赤いちゃんちゃんこを羽織り、赤い帽子をかぶるという謎の格好だったが、このチームのアットホームさが伝わってきた。

 その他にも、ビンゴやゲームで盛り上がり、始終笑いが絶えない、知らない人ばかりでも十分楽しめた2時間だった。

 この楽しい会には、みんなを楽しませようとたくさんの大人が携わっているのだ。監督コーチ陣と5,6年の母親が中心となっているので、来年は自分がこの会を作るお手伝いをするのだと襟を正す思いだった。

 ちなみに、クリスマス会には、リオも参加した。リオは、人見知り場と所見知りの激しい子ではあるのだが、クリスマス会という期待感の高まる催しに興味津々で付いてきた。始終私にべったりで離れなかったが、それでも各演目を十分楽しんでいた。そんなリオが最高に喜んだのは、ビンゴの景品だった。

 中身の分からない、紙袋に入った大小様ざまなプレゼントが一斉に舞台に並べられ、ビンゴになった順番に好きなものをもらう。大人も子どももビンゴになった順に舞台へ上がっていく。ビンゴの中盤。

「次、35」

「はーい」

 2名手が上がったと思ったら、ミツキとリオだった。2人が舞台に上がる。ミツキは、初めから決めていましたとばかりに舞台にあがるなり、1番大きな紙袋を選んだ。その後ろをリオが悩みながら、1番小さな紙袋を選んだ。

 自席に戻ったリオが袋を開けると「かわいい」とほほ笑みながら見せてくれた。ケースに入ったバラの花のペーパークラフトだった。

「リオちゃん、いいの選んだね」

 リオと話しているとミツキがやってきた。

「見てくれよ、これ」

 ミツキの選んだ大きな袋の中身は、ボックスティッシュ6個組だった。

「日本昔話かよ!」

 リオと私と野島さんは、死ぬほど笑った。ヘンに欲をかくもんじゃない。90個もプレゼントを用意するのだから、中にはこういうのもあるだろう。

 ミツキは気の毒だったが、リオが気に入るプレゼントをもらえてよかったと思った。クリスマス会も楽しく、かわいいプレゼントをもらえたことで、リオにとってのレッドウィングスの好感度が上がったに違いない。

 ミツキがレッドウィングスに入部したら、今までとは休日の過ごし方が変わってくる旨をリオにも説明していた。

「ママは、ミっちゃんと野球に行ってしまうことが多くなると思うけど、パパがリオと一緒に遊んでくれるから安心してね」

 リオの不満を減らそうと思っても空回りするばかりだった。リオはどこに行くにも私と一緒で、父娘で行動するとこはなかったからだ。パパは、小学生にあがる前の子どもが苦手とまではいかないまでも、得意ではなかった。まして、女の子をどう扱っていいのか分からないようだった。その結果、リオは完全なるママっ子だったのだ。

 ミツキが野球を楽しんで続けること、リオがレッドウィングスに好感を持ってミツキを応援してくれること、リオとパパが仲良しになって休日を楽しんでくれること、これらが私の願いだった。

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