葉野ミツキの育て方

そんなトリセツ、あったらいいのに

レッドウィングス効果

 レッドウィングスでの野球生活は、ミツキにとって楽しさと喜びの連続だった。レッドウィングスでなければ経験できなかったことがたくさんある。
 5年生のクリスマス会での寸劇とダンス。6年生のクリスマス会での女装。2回参加した夏合宿。6年生の夏合宿では、蝶野監督と6年生3人で真っ暗な浜辺で語り合った。まさかの努力賞受賞。まさかのリーディングヒッター

 入部するまであんなに悩んだにも関わらず、一度も辞めたいとも、休みたいとも言わなかった。学校に登校する平日はなかなか起きず、起きてもだらだらしているのに、野球の朝の行動は早かった。

 家族でタクシーに乗ったときに気付いたのだが、ミツキが運転手さんに「ありがとうございました」と言って降りるようになった。以前は私たち親が言っても、子どもたちはそのまま降りていた。レッドウィングスでの移動で監督・コーチの車に乗せてもらうので、自然と身に着いたようだ。おかげで、リオもミツキの真似をして言うようになった。

「葉野くんを車に乗せたら、葉野くんだけ降りるときにちゃんとお礼を言ってくれたって、うちの主人が言ってたよ」

「信号のない横断歩道で葉野くんと友だち数人が渡ろうとしたら、ちょうど車が来て車が止まったの。そうしたら、葉野くんだけがちゃんと運転手に頭を下げてたよ。これって、出来そうで出来ないことだよね」

 こんなありがたい言葉を耳にするようになった。親として私自身の行いで、あるいは言葉で、ミツキに伝えてきたこと。でも、なかなか身につかないと感じていたことが、レッドウィングスでしっかりと身に着いた。野球だけでなく、人としての行いをも教えてくれた監督・コーチに感謝しかない。

 ミツキだけでなく、リオとパパにもいいことがあった。ミツキが5年生のときは、1年生のリオは毎回球場に付いてきた。理由はパパと2人で留守番していても楽しくないから。
 球場に行くと5歳の男の子と2歳の男の子がいて、リオは3人で遊んだ。特に5歳のこうちゃんと気が合い、会うのを楽しみにしていた。しかし、こうちゃんは6年生のお兄さんの卒部により会えなくなってしまった。

 つまらなそうなリオを見て、休日にリオも何か習い事をするのがいいと思った。リオは泳ぐことが好きで、1歳のころからよくプールに連れて行った。何度も教室に通わせようとしたが、人見知りが激しく習い事をさせられる状態でないので断念せざるを得なかった。
 2年生になり、小学校にも慣れて、以前よりも人見知りが落ち着いたこのタイミングで、なんとしても習わせたい。夏休み前、近所のスポーツジムで「ジュニアスイミング3日間体験」の広告を発見。たったの3日間だけと強調してリオを誘った。

「今日のプールすごいんだよ。水がきれいだし、着替えるところもきれいなんだよ」

 さすが大手スポーツジム。いつも連れて行っている公共のプールとは違う。

「コーチに教えてもらいながらどんどんみんな泳いで行くから、誰ともしゃべらなくてもいいんだよ。最初にみんなの前で名前を言ったりもしないの」

 個人スポーツなので人見知りのリオに合っていると確信した。気を良くしたリオは、体験のあとすぐに入会した。そして、リオのスイミングへの送迎は、パパが担当になった。

 実はスイーツ好きのリオとパパ。スイミングの帰りにリオにおねだりされて、2人で毎回食べて帰ってくるうちに、すっかり2人は意気投合。というか、リオにもてあそばれるパパの図が出来上がった。
 日曜日は、スイミング。土曜日も2人でショッピング、登山や日帰りスキーなど、それまでのリオとパパでは考えられなかった関係性が生まれた。完全にリオが主導権を持ち、パパが振り回されている感が気になるところだが、パパがそれでいいなら、まあいい。

 ミツキは、送別大会後は中学でも野球を続けるか問題が浮上。中学校の野球部に入部か、クラブチームに入部か、野球以外のスポーツをするかの3択。

「オレには野球しかないから、野球やるよ」

 ミツキの名言である。このセリフは一般的には、何年も野球一筋で野球に人生を捧げている人がいうと「おぉ」と感嘆の声がもれる。ミツキが言うとやや失笑だ。ミツキが言いたいのは「スポーツは野球しかやったことないし、他のスポーツを1からやるのは大変そうだし、できる気がしない。野球をやるのが無難」ということ。セリフは格好いいが、真意はしょぼい。

 野球は好きか嫌いかで言ったら、もちろん好き。けれども、ど根性で練習するまではいかない。プロ野球も、メジャーリーグも、高校野球も観ない。突き詰めて考えたら、野球が好きなわけじゃなくて、野球の仲間が好き。

 そんなミツキが中学野球でどうなるのか心配だが、応援し続ける。

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