【こぼれ話】自主性④

 子どもたちのお手伝いの第一歩として、1歳半くらいからは、おもちゃで遊んだ後は一緒に片付けをした。

 おもちゃ箱は全部で3つ。初めての片付けなので、箱の中身がぐちゃぐちゃでも箱に入れればOK。

 ミツキは、雑だがテキパキ片付けた。ところが、リオは動きが止まった。3つの箱を前にして、どうしたらよいか分からず固まっている。とにかく箱に入れればいいと促しても動かない。「このおもちゃは、この箱に入れよう」と言うと、それに従った。次第におもちゃの定位置が決まり、繰り返すうちにリオも覚えていった。

 3歳のある日、リオに1人で片付けるよう頼んだ。最後まで1人でがんばったのだが、そのあとすぐに知恵熱が出て3時間ほど死んだように眠った。リオにとって片付けはよっぽど頭を使い、疲労を伴うことだったのだろう。その日以来、リオは目的のおもちゃ以外は出さなくなった。

 

 暑い時期、子どもたちは氷枕を使った。朝起きたら各自冷凍庫に戻す約束だったが、2人とも毎日忘れた。促されて慌てて戻す。あまりにもできないので、敢えて声をかけるのを止めた。寝る間際に気付いても、時既に遅し。「暑い、暑い」と文句タラタラで眠る。これで少しは懲りたかと思いきや、次も忘れるので呆れた。

 そんな夏を何年も続けていると、兄妹で方向性が固まった。ミツキは、冷蔵庫に戻す習慣が付いた。そして、リオはどんなに暑かろうが氷枕を使わなくなった。

「片付けは面倒。暑い方がまだマシ」

 リオは、面倒を排除していくタイプのようだ。多少面倒でも習慣化してしまえば快適が手に入るのだが……

 

 小1になったミツキに、毎朝の新聞取りとゴミ捨てと風呂掃除を任せた。

 このときリオは3歳。リオには、朝のカーテン開けを任せた。

 ミツキの働きぶりは、大方良好だった。朝食の前に新聞を取りに行き、登校時にゴミを持って家を出た。私がゴミ出しの日に玄関に出し忘れていると「今日はゴミの日だよ」と教えてくれたり、マンションの下に降りてからでも「ゴミを忘れてるよ」とわざわざ戻ってきてくれたりした。

 しかし、風呂掃除は毎日声をかける必要があった。残念なことに、10年経った今でも状態は変わっていない。

 

 リオの毎朝のカーテン開けは、手伝いとは言いがたいほど当たり前のことだ。ところが、この当たり前のことができない。

 情けないことに、中1になった今でも忘れる。カーテンも窓も開けずにベッドメイキングをして、暗いままの部屋から出てくる。忘れない方法を考えるように促すと、部屋の壁に大きな貼紙をした。効果があるようだ。

 

 出来具合は関係なく、自主的に行動できることを目標にしていたが、それがなかなか難しかった。

 もっと言うと、習慣化して欲しいのは、手伝いだけではない。

  • 食事の準備が整ったらすぐに着席する
  • ゴミは、すぐにゴミ箱に捨てる
  • 脱いだ靴は、上がり口の「脇」に揃える
  • 洗面台使用後の周辺の水濡れや髪の毛を処理する
  • 風呂上がりに、浴室の台や湯船の蓋の水気を切る
  • 使ったものは、すぐに片付ける

 日常の些細なことばかりだ。当たり前のことを当たり前にやることで、家族みんなが気持ちよく生活できるのだ。

 しかし、それが一向に身につかない。いったい何回言ったら分かるのだろう。

 以前、子育てにおける「何回言ったら分かるの!」の回数は500回だと、何かの本で読んだ記憶がある。1日に1回言ったとして、1年4か月かかる計算だが、我が子たちは10年以上同じことを言われ続けている。残念でならない。

 

 手伝ってもらったら労い感謝し、失敗しても怒らないなど、子育ての基本だそうだ。

 そんなこと、子育てでなくとも人としての基本なので、初めからやっている。それなのに上手くいかないのはなぜ? 他に何をしたらいい?

 

 習慣化させたい項目を表に書き出して、できた項目の数だけ毎日瓶にビー玉を入れていくというポイント加算制度を取り入れてみた。ポイントが貯まったらうれしいご褒美が待っている。何度か試してみたが、毎回初日は喜んでも3日で飽きてしまうのがオチだった。

 

 やはり、やさしく諭しているだけではダメなのだろうか。私の母方式の罰を与える方法が、結局は有効なのだろうか。

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