葉野ミツキの育て方

そんなトリセツ、あったらいいのに

高校受験終了後

 高校受験といっても面接のみだったが、とにかく合格したのだから、ミツキ本人にはやりきった感があった。そりゃあそうだろうけど、私はどうもおもしろくない。

 その上、合格した途端に登校時間が更に遅くなった。それまでは、時間が近づくとそれなりに慌ただしく行動していた。しかし、ついにそれさえも全くなくなってしまった。目覚まし時計もかけない、起きようとしない、起きてもだらける。だけど、お肌と髪の毛のお手入れの時間は省かない。

 私は、起こすべきなのか悩んだ。今までに何度も悩んだことだが、その度に「義務教育の間だけは」と思い直した。直接起こすことはしないまでも、部屋の明かりを点けたり、テレビの音量を上げたり、夫やリオと大きな声で話したり、いろいろやってきた。しかし、さすがにバカらしくなった。

 合格発表から2週間後、ついに遅刻した。卒業までの2か月間で遅刻は6回となった。当然ベル着は出来ていないし、私とのお小遣いポイントの約束も守れなかった。

 合格後の実力試験の日は、土曜日だった。休日なので、夫とリオは寝ていた。朝食の支度があるので私は起きていたが、ミツキを起こす気はなかった。遅刻して焦ればいいんだ。遅刻して合格取消になっちゃえばいいんだ。実際そうなったら困るのだが、私はそんな気持ちで、朝の時間を静かに過ごしていた。

 「ピピピ」と3回目覚ましのベルが鳴り、ミツキはすぐにバチンと消した。いつもならここから二度寝が始まるのだ。だが、この日のミツキはサッと起き上がり、ベッドメイキングを済ませ、涼しい顔で起きてきた。

「なんだよ、できんじゃねーかよ」と私は舌打ちをする。

 ADHDの子どもに睡眠障害があるという話はよく聞く。しかし、ミツキの場合は相互関係はないと思う。だって、こうして起きれるのだから。遊びの日、部活の日、重要な試験の日には、自分自身で起きてくる。つまりは、やる気の問題だ。

 今更だが、そもそもミツキのADHDは謎だ。LDとはなんだろう。確かに受験は苦労したけれど、ミツキは本当に勉強ができないのだろうか。実際、勉強の成果は出なかったが、興味のあることへの記憶力や応用力に驚かされることがある。仮に勉強に興味を持てていたら、どんな結果だったのだろうか。

 本やブログに書かれているようなADHDの行動パターンは、ミツキには少ない。不器用と集中力がないことくらいだ。

 ADHDとは、なんだろう。結局よく分からない。怠けている訳じゃないと思ってあげたくても、ミツキの行動は、どうしたって怠けている。だって、本人がやりたいことはしっかり出来るのだから。コミュニケーション能力だって十分ある。ミツキのやりたくない「勉強」と「時間の工夫」以外は、問題ないのだ。

 しかし、考えてみると、中学生活において「勉強」と「時間の工夫」が大部分を占めているのだ。だから、しんどい。

 神経伝達物質不足で、余程のことがないとやる気を起こすのが困難なのだろうか。栄養療法は、失敗だったのだろうか。

「公立公立C総合高校の見学のときにいた、クラス委員長覚えてる?」

「うん、栄養療法やってるかもしれない子でしょう?」

「そう。席がオレの前で、最近よくしゃべるんだ。C総合高校に受かったんだって」

「そうなんだ。すごいね。よかったね」

「やっぱりオレと一緒でグルテンフリーやってるみたいなんだ」

「そうなんだ。じゃあ、合格したくらいなんだから効果あったんだね」

「まあ、そういうことだな。で、時間の使い方が苦手だから、スマホのリマインダー機能で自分の行動を制御してるんだってさ」

「得手不得手をしっかり理解して、自ら工夫する努力をしているんだね。そういうこと、私はミツキにもして欲しいし、出来ると思うんだけどな」 

「いや、オレには出来ない」

「なんでよ」

「だって、オレ、スマホ持ってないし」

「やろうと思えばどんな方法だってあるんだよ。じゃあ、今度スマホ買ったら、出来るんだろうな。まったく、この言い訳ヤローが!」

 栄養療法の成功と失敗の境界線はどこだったのだろうか。

 15年間、悩みながら試行錯誤してミツキを育ててきた。ままならない事ばかりだったけど、貴重な経験をさせてもらった。大変だったけど、楽しかった。心から感謝している。ミツキ、ありがとう。

 でも、もう終わりだ。今後は、もう知らん。

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