葉野ミツキの育て方

そんなトリセツ、あったらいいのに

なんでも受け入れちゃう系男子

 中学3年生に進級し、3階の教室となった。

「約束通り、これからは7時55分に家を出るんだよ」

「8時で大丈夫だよ」

「おっと、話が違う。3年になって教室が3階になったら7時55分に出る約束でした」

「分かったよ」

「でね、確実に55分に出る意識付けのために、ポイント制を導入してみない?」

 怪訝な表情でこちらを見ている。

「お小遣いの値上をして欲しいんだよね? だからさ、この度お小遣いを千円から一気に3千円に値上げしようと思うの」

「おーマジか!」

「いいでしょう? ただし、条件付き」

 一気に怪訝な表情に戻る。

「8時までに家を出られた日は、このビンにビー玉を1つ入れます。例えば1か月の登校日数が20日の場合、ビー玉の単価は150円。ビンに貯まったビー玉の数をかけた金額が、お小遣いになるの。毎日がんばったら3千円。どうする?エントリーする?」

「えー。エントリーしないとお小遣いはどうなるの?」

「エントリーしないという選択肢は、感心できませんが、まあ、千円のままでしょうな」

「あー難しいな」頭を抱えてのたうち回る。

「3千円もらえて、意識改善もできる。こんな一石二鳥なおいしい話ありませんぜ、だんな」

「やるよ。オレ」

「よし、エントリーね。がんばるんだよ。どのみち55分に出なければ遅刻になるんだから。遅刻したら受験で推薦がもらえなくなる。とにかく今、あなたは踏ん張りどきなんだよ」

 こうしてお小遣いポイント制度が始まった。

 12か月間の結果はと言うと、もらえた最高金額は1,846円、最低金額は136円だった。それ以外も千円超は2回で、あとは400~500円がほとんどだった。

 長期休暇やゴールデンウィークがある月は、ビー玉の単価が上がるのだから、ねらい月だ。特に8月は、最終週のみの登校だった。しかもその内3日間は修学旅行だから、残りの2日間がんばれば満額もらえたのだ。それにも拘わらす、1円ももらえなかった。それでいいのか、ミツキ。

 こんな結果になるならエントリーしない方がマシだったじゃないか。私だったら泣いて悔しがって反省するところなのだが、ミツキは平然と受け入れてしまう。

「はい、今月のお小遣い。136円ね」

「あははは。いやいや、136円ですか」

 こんなノリで、意識改善など無理だ。

「8月はたった2日がんばるだけだから、必ず55分に出るんだよ」

「ちゃんと出るよ。安心しろ」

「安心できねぇんだよ」

「まあまあ、落ち着け」

「落ち着けるか!」

「オレもそんなにバカじゃないよ」

「私だって、そう思いたいよ」

 結果、おバカでした。

「残念ながら、今月のお小遣いはないよ」

「Oh! nothing! でも大丈夫! なぜなら、夏休みにばあばとねえねにお小遣いもらったから」

「おのれー!」

 没収してやりたいくらいだが、それは私の権限ではできない。これは私の頭を悩ます問題だった。ミツキとリオをとても大切にしてくれてお小遣いまでくれることは、ものすごくありがたいことだった。しかし、ミツキに限っては、甘やかす材料になってしまうのだから困る。だが、無一文で万引きなどされては困る。さりとて、私が折れてお小遣いをあげるわけにもいかない。やはり、とてもありがたいことで、あとはミツキ自身の問題ということになる。

「なんか腹立つな。じゃあ、もう毎月のお小遣いは初めからいらない?」

「そんなわけないじゃん。いるよ。けど、もらえないんだよ」

「私だってあげたいわ! 毎月満額もらえたら年間で36,000円、更にばあばたちからのお小遣いをプラスしたらかなりの金額だよ」

「分かってるのよ~、私だってぇ。でも、できないんだから仕方ないじゃない」

 おねえ言葉になって逃げるミツキ。仕方ないで済ませてしまっていいのだろうか。だって、あと3~5分早く出るだけなのだ。そんなに難しいことなの?

 ミツキは、今までも条件をクリアできずに諦めたことがたくさんあった。小学生では3DS。中学生ではスマホ。水道代3,000円負担。漢検受験料(不勉強で不合格の為)負担。

 約束を守らなかったがために諦めてきたことばかりではないか。難しい条件は出していない。甘えを捨てて、ほんの少し自分を律することが出来たら、自分の思い通りになるんだ。上手くいかなかった結果を真摯に受け止めて、反省し、次に生かせ!

 ミツキは、仕方ないと諦めて何でも受けいれてしまう「何でも受け入れちゃう系男子」なのだ。

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