学校給食アレルギー除去食申請

 春休み中から始めた栄養療法。2年生に進級して学校が始まると、給食のことが気になり始めた。家での栄養療法を続けられそうなので、学校給食も徹底しようと思った。

 4月の半ばに、給食の除去食申請に必要な食品管理の書類を病院へ受け取りに行った。その際の問診で口内炎とニキビができにくくなったことを伝えると、医師が「これから成績が上がるよ」と言った。

 食品管理の書類を学校に提出したのは、保護者会の日だった。保護者会後に養護の宮本先生と除去食申請の面談を予定していた。

 保護者会開始直前、私が席に着いていると宮本先生が近づいてきて「保護者会終了後に保健室にいらしてくださいね」と耳打ちした。

 私の隣に座っている野島くんのお母さんが「どうしたの?  ミツキくんどうかしたの?」と、驚いている。

「大丈夫。今具合が悪いわけじゃないの。給食のことで先生にお願いがあってね。今日はこの後面談なんだ」

 野島さんは、これぞ鳩が豆鉄砲食らった顏という表情をしながら首を傾げた。すでに校長先生が壇上に上がっており、辺りはシンとしている。私は「今度詳しく話すから、近いうちにランチ行こうよ」と小声で言った。

 除去食申請のための面談とはかなり正式なものだったようで、保健室に行くと養護の宮本先生だけでなく、栄養士の先生、家庭科の先生、それから副校長先生までいた。宮本先生が進行役で、ミツキの除去食申請理由を述べた後、給食に関しては栄養士の先生の承諾、家庭科調理実習に関しては家庭科の先生の承諾、学校全体として副校長先生の承諾を得た。何か所もサインが必要で、除去食の申請が学校を巻き込む一大事なのだと実感し、改めて家庭での栄養療法の徹底を心に誓った。

 初めは私と先生方だけの面談だったが、副校長先生が退室し、代わりにミツキが入ってきた。

「今、お母さんと給食の除去食について話をしました。今後葉野くんの給食は、除去食になります。例えばみんなのものにはチーズがかかっているけど、葉野くんのものにはチーズがないものが出てきます。また、パンのときは学校では出ないので、家から代替品を持って来てもらうようになります」

「はい。分かりました」

「家庭科の調理実習で小麦や乳製品を使う料理の場合、葉野くんは調理は出来るけど、試食は出来ないということになります」

「はい。大丈夫です」

「2年生では移動教室がありますね。移動教室でも給食と同じように除去食や代替食が出ます」

「はい」

「それから、秋の遠足のときは、全行程班行動です。お昼ご飯も班の友だちと考えて食べに行くことになるから、君はしっかり自分のことをみんなに伝えるんですよ」

「はい」

「例年、安く早く済まそうとファストフード店に入ることが多いから」

「あ、はい」

「まあ、葉野くんなら言えるよね」

「はい、たぶん大丈夫だと思います」

「では、お母さんも葉野くんも大変だと思いますが、良い方向に進むようにがんばりましょう」

 口では簡単に除去食や代替食なんていうけれど、家庭を一歩出たら周りの人間の食をも巻き込む大変なことであり、簡単なことではないのだと改めて思った。

 家庭でやる分には、料理を作る私が気を付ければ済む話だが、外に出たらいろいろな人の食の好みや、その瞬間に食べたいものだってある。家族でさえ店選びに頭を悩ませるので、外食自体しなくなった。コンビニに行くと、小麦と乳製品と添加物だらけで手に取れるものがない。一歩外に出たら、食の遭難者になってしまう。

 そう考えると、いつまで続けられるのかと心配になった。周りをも巻き込むくらいならやめようと思うときが、遅かれ早かれ来るのではないかと思った。

 ところが、中学を卒業するまでの2年間、最後まで続けることができた。それはひとえにミツキの周りの人たちのおかげだった。

 2年の遠足では、ビビンバの店へ。3年の修学旅行では、わざわざグルテンフリーの店を探して入店した。どちらも班の仲間の提案だったそうだ。彼らの思いやりに感謝の想いでいっぱいだ。

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