初めての三者面談

 公立中学に入学した息子のミツキ。初の三者面談は、持ち時間30分超えの45分間で、内容は終始生活面についてだった。

 初の中間試験結果が、順位を後ろから数えた方が早いという悲惨さだったので、学習面にばかり気を取られていた。それだけに、生活面だけで時間超えになるとは想定外だった。

 学習面に不安はあるものの、部活動の野球や友達との関わりも良好で、問題のない中学校生活を送っていると思っていた。

 先生からミツキの生活態度を聞いて情けない気持ちになった。

 毎朝、登校時刻5分前の予鈴寸前に教室に滑り込み、他の生徒がすでに着席しているのにも関わらず、かばんの中の物をロッカーに移すといった個人的な行動をする。しかも、慌てるそぶりもない。

 授業中、先生の話や生徒の発言に対して頻繁に茶々を入れては授業妨害をする。各教科の先生方から担任に苦情があるそうだ。真面目に授業を受けたい生徒も迷惑がっていることだろう。

 面談中、気になることがあった。ミツキが異常なほどよくしゃべることだ。先生と私の二者面談ならたくさんの話題に触れられるのに、ミツキが入ることにより、たった二つの話題で時間切れとなった。

「きみが、予鈴着をしっかり守らないとみんなの行動の妨げになるんだよ」

「わかってるんです、ぼくだって。急がなきゃいけないことぐらい。なのに、うまくいかないから困ってるんですよぉ」

「あと5分早く家を出よう」と私。

「ああ、5分か。難しいなあ。家を5分早く出てもゆっくり歩いたら同じになるしね」

「急いで歩けばいいじゃない」と先生と私。

「そうなんだけど、そうなんですけどね」

 ミツキは、体をもぞもぞと動かし、頭をもたげさせたところから一気に振り上げた。

「そもそも、ぼくは、遅刻はしていないわけですよ。5分前の予鈴には間に合っているんですから」

「うん、そうだね。君は、遅刻はしていない。でもね、この学校の目標を知っているよね」

「ああ、わかってます。5分前の予鈴着」

「予鈴で着席しておかないとね」

「でも、一応予鈴ギリギリで着席はしてます」

「うん、そうだね。一度は着席する。ただ、その後がよくない」

 ああでもない、こうでもないと続く。しびれを切らした先生が話題を変える。

「授業中にきみが場の雰囲気にそぐわない発言をすると、他の子たちのやる気や集中力が一気に落ちてしまうんだよ」

「えーでも、ぼく、まったく関係ない話はしていないです。けっこう的を射たこと言ってると思いますけど」

「自分でそう思っていても、先生方が困ってるわけだから、しばらくだまって授業受けてみなよ」と私。

「あ、でも少し前に先生に注意されてから、ぼく、気を付けてますよね?ね?」

 ああでもないこうでもないが続き、45分間が過ぎていった。

 私の想像していた中学生の三者面談とかけ離れていた。まず、学校の様子や成績のことを先生から聞く。そのあと、家庭内での困っていることの有無や自主学習の様子などを先生から聞かれ、子どもがボソボソと答え、親がその回答を補充するものだとばかり思っていた。

 中学生男子とは、大人の話にかろうじて返事をするだけの存在。おしゃべり好きなミツキも中学生になったら言葉数が減るのだろうと勝手に思い込んでいた。

 初の三者面談がこうなるとはまったく想像していなかった。

 家庭内のコミュニケーションと第三者を含めたコミュニケーションとでこんなにも違和感をもったのは、ミツキが小学校低学年以来のことだ。

 小学校低学年生のようなミツキの中学生ぶりに、漠然とした不安を覚えずにはいられなかった。

 

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