葉野ミツキの育て方

そんなトリセツ、あったらいいのに

塾②

 スクールカウンセラーの山崎先生には、塾ではなく家庭教師を勧められていた。大学で心理学を学んでいる学生に家庭教師を頼むといいのだそうだ。一般の家庭教師よりも低価格で、且つ、心理学を学んでいるから集中力のない子どものコントロールを心得ているからだ。
 私に、そんな都合のいい学生の心当たりはない。残念ながら山崎先生にも紹介のつてはないという。問合せ機関なども特になく、心理学部のある大学の生協に家庭教師募集の案内を出してもらうのだそうだ。
 上手くいけば素晴らしいが、初対面の学生に対して、私が面接や金額の交渉をすると考えると不安の方が大きかった。
 家庭教師は諦めたが、少人数制は譲れない。そこで、個別塾を選んだのだが、結局成果は上がらなかった。

 定期試験前の土日は塾長直々の通達により、半強制的にお弁当持参で塾に缶詰状態を強いられた。英数以外の教科のプリントも配布され、自習室で自主学習をするのだ。帰宅したミツキのプリントを見ると、5教科すべてほぼ未記入だった。試験前の貴重な時間を無駄にしてしまった。他の生徒に有益な缶詰状態も、自主的に学習を進めることの出来ないミツキにとっては意味がないことなのだ。

 この塾ではダメだと思った。もっと規模の小さい、先生の目が生徒1人1人に行き届く塾はないだろうか。

 ある日、滅多に通らない方面の近所を歩いていると、こじんまりとした塾を発見した。

 塾長は、大手学習塾で10年以上教鞭をとったあと、昨年この地で個人経営塾を始めたばかりの30代半ばの男性だった。

 この塾を私が気に入ったポイントは、大手塾のフランチャイズではないという点だった。大手塾のノウハウを生かしつつも、大手塾のマイナス面を省いた理想的な塾だと塾長は豪語した。

 1コマの授業料が安いので、今までとほぼ同額の月謝で週3回授業を受けることができた。新しいテキストを買わされることもない。

 個人経営塾なので、学習方法をミツキに合わせて融通が利くのではないかと期待した。

 塾長は、かなり自信満々な男性だった。何度も「ぼくは東京で数学の教え方が一番うまい」と繰り返した。ちょっと面倒くさそうな先生だと思ったが、それくらい自信がないと個人経営塾など開けないだろうと納得した。

 ミツキのこれまでの成績を見せると、「もっと早く僕のところに来てほしかったな」と言い、成績の悪いミツキの受け入れは、不満そうだった。高い実績がないと人気の塾にはなれないのだから、塾長も必死なのだろう。高学歴の実績ではなく、学力の底上げに特化した塾を目指してもらえるとありがたいのだが。

 私は無理を承知で「希望する学習内容」を塾長に提示し、それらを了承してもらえるなら入塾すると伝えた。

【英語】

・学校教科書の日本語訳の徹底

・学校教科書の英文記述の徹底

・学校教科書を繰り返し音読

・学校ワークを繰り返しやる

【数学】

・学校ワークを繰り返しやる

【注意点】

・時間管理の徹底

・次々に新しい問題を与えても定着しないので、同じ問題
 を繰り返す

 塾長は呆れ顔だった。これらは自主的にやることであり、塾でやることではないと言いたそうだ。だが、こちらとしては、自主的に出来ないから、塾にお願いしたいのだ。塾長は不服そうに渋々了承した。

 この塾には、中2の夏の家出事件後の後、お盆明けから通うこととなった。

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