悩みが尽きない

 サプリの摂取を止めて1か月経過した8月の半ば、野球の公式試合の応援に行った。ミツキはセンターでスタメン出場。2度センターフライをキャッチし、ホッと胸を撫で下ろした。しかし、フライキャッチはよかったが、試合には集中できていないようだった。フラフラ、ウロウロしている。打席も思わしくなく、8月以降まったく打っていないらしい。寺田先生からも「薬をちゃんと飲んでいるか」と聞かれたようだ。
 サプリを摂取しているときに劇的な改善は感じないものの、摂取しなければ、それなりにパフォーマンスへの影響があるということが判明した。塾も替わることだし、食事とサプリの2本柱に戻そうと思い直した。

 新しい塾は体験授業を経て、9月から正式な入塾となった。入塾の手続きで、塾長はなんだか迷惑そうだった。高飛車で感じの悪い塾長だとは思ったが、他に行き場がなかった。

 野球部は10分前集合が当たり前だ。野球を長く続けた人は、大人になっても10分前集合が身に着いているという話をよく耳にする。しかし、ミツキの場合は、野球以外では、遅刻ギリギリか、やや遅刻の連続だった。学校の朝登校はギリギリ、部活のための再登校は10分前、塾はやや遅刻。

 塾が近所になったことにより、始業時間に家を出る。よって、3分の遅刻。もちろん、早く家を出るように促しているが、本人にその気がないのだ。

 このころの私の日記には、毎日ミツキへの不満と不安と悩みが綴られている。

・ミツキにADHDの薬を飲ませるべきか

・サプリと薬どちらがいいのだろうか

・中間試験の結果がひどすぎる

・もう、かける言葉もない

・夫とミツキが成績のことでケンカ

・ミツキが怒り、スタンドライトを壊した

・ミツキも夫も大バカヤローだ

・塾にギリギリに行くし、授業中は眠そうにしている
 みたいだ

・本当にミツキがむかつく

・塾をやめると言ってほしいくらいだ

・ミツキには万策尽きた

 入塾する前にお願いした学習法は、やはり塾長に受け入れられていなかった。結局、前塾のテキストを使い、今までと同じ学習だった。つまり、ミツキはテキストの見出しを見て、その場限りの学習を続けていた。どこの塾に行ってもお願いしたようには、やってくれないだろう。ならば、そのフォローを家庭でしなければいけないと思った。
 だが、ミツキは親が勉強をみることを激しく拒んだ。私だって中学生に付きっきりになどなりたくない。でも、他にどんな方法があると言うのだ。

 ミツキは塾を辞めて1人で勉強すると言った。本当に1人で勉強できるのか確認するために、ミツキに課題を出した。期限を決めてテストを実施すると、予想通り全くできなかった。
 やはりミツキは1人では計画的に勉強を進めることは出来ない。今後は、英語の学習は私と進める旨をミツキに納得させた。

 塾の英語を辞めて、週3回すべて数学のみにしてもらおうと塾へお願いをしに行った。

「葉野さんね。葉野さんが初めに言ってきた勉強法をウチのスタッフに話したら、みんな笑ってましたよ」

 塾長はあざ笑った。

「そうですか。では、塾のやり方で2か月間週2回英語を習っていても、全く理解度が上がっていないことは、どう説明しますか?」

 そう質問したかったが、塾だけの責任ではないので黙って帰ってきた。

 家に帰ってから急に悲しくなった。自分の人生を振り返った。私は頭脳明晰ではない。中堅程度の高校を出て、パッとしない短大を出て。運動神経もごく普通で。これといって称賛されるようなことはなかったけれど、人に笑われたこともなかった。なんで私が、あの塾長にあざ笑われないといけないのだろうか。

 しばらく落ち込んだが、気を取り直して復活。高校受験まで、あと1年ちょっと。落ち込んでいる時間などない。
 私が絶対にミツキの成績を上げてやる。わははは。私は逆境に強いのだ。むしろ活力が湧くわ! ぬははははは。見てろよ塾長!

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