葉野ミツキの育て方

そんなトリセツ、あったらいいのに

塾①

 中1の11月から個別塾に通い始め、英語と数学を受講していた。授業は週2日だけだが、自習室があるのでいつでも塾に行くことができる。塾側は授業のない日にも自習室を利用するよう勧めていたが、ミツキは行こうとしなかった。本来なら、私も勧めるべきなのだろうが、勧める気にならなかった。少しだけ自習室にいて、そのあと遊びに行かれては困るからだ。友だちと接触の少ない西の駅の塾を選んだが、遊ぼうと思ったらいくらでも移動できてしまうのだ。塾の宿題のためだけに自習室に行くなら、下手に家を出さない方がマシだった。ミツキには、どんなに優れた環境を与えようとも、正しく利用せず悪用してしまう難点があった。

 入塾後まもなくして、冬期講習を受けるよう勧められた。週2回の通常の授業とは別に36回分。内訳は、数学10回・英語26回。1回1時間半の授業で3600円。つまり冬期講習代13万円。通常授業と合わせると15万円超だ。

 たかが中1の数か月分の復習でこんなに金額がかかるとは。自分でヤル気になって、繰り返し問題集をやればタダだというのに。超名門校を目指しているなら、特別な授業が必要かもしれないが。私にはまったく納得がいかなかった。

「すみません。金額が高額なので、一旦持ち帰らせてください。主人に相談します」

 バカバカしくて、初めは大枚をはたく気にはなれなかった。しかし、ミツキは、英語をまったく理解できておらず、ピリオドさえまともに付けられないお手上げ状態だった。藁をもつかむ思いで冬期講習に懸けることにした。

 12月の初めから約2か月間に渡って、冬期講習の授業が入った。真面目に通い、宿題もサッと済ませていた。短期間に繰り返し学習しているので、基礎の定着が期待できそうに思えた。

 ところが、終わってみれば1ミリも理解度が上がっていないことが、その後の試験で判明した。

 13万円も払って、毎日のように塾に通って、いったいどうしたらこうなるのだろうか。

 ミツキの学習の様子を改めて観察してみると、すぐにその原因が分かった。

 どの英語の問題集も単元ごとに分けて学習していく。見出しには「be動詞」「助動詞」「現在進行形」などと書かれている。更に各単元の中でも肯定文、疑問文、否定文に分けて学習する。各単元の問題構成は次の通り。

1.穴埋め問題

2.日本語訳問題

3.並び替え問題

4.日本語から英文書換え問題

 誰もがこのような問題構成を経て、理解度を増して定着させていく。ところが、ミツキは定着しない。ミツキが問題を解いた形跡を確認すると、間違いはあまりない。正解はするのに、なぜ理解度が低いのか不思議だった。

 ミツキの場合、穴埋め問題では英文も日本文も全く見ずに、穴埋めだけを機械的にしていた。「be動詞」の肯定文では、主語が「I」だったら「am」、それ以外だったら「are」というように。「助動詞」の単元では、ひたすら「can、can、can、can……」と何も考えずに書き込んだ。

 並び替え問題では、一か八かの消去法を実践。簡単な文なので正解するが、ちょっと込み入った問題だとアウトだろう。

 各単元に書かれた見出しは、ミツキにとってはネックだった。英文を訳してみて、初めて「ああこれは、現在進行形の文だな」と考えてからの穴埋めなら、有効な学習となる。しかし、ミツキの場合は、見出しを見て答えを判断しているのだから、定着などするはずもない。

 他にも問題点は山積みだった。問題をやりっぱなしで、丸付けをしない。丸付け後は、間違った問題の解答を赤ペンで写す。振り返りをしない。繰り返しやるように促すと、訂正箇所だけ丸暗記してしまう。後日もう一度やってみると、同じ間違いをする。

 くどいようだが、13万円もかけているのだ。しかも個別塾で、生徒2人対先生1人だというのに、先生はミツキの学習態度に気付かないのだろうか。冬期講習後、ミツキの問題点を塾長に相談したが、改善はみられなかった。

 それから1か月後、今度は春期講習を提案されたが、丁寧に断らせていただいた。

「復習は家庭学習でがんばってみますので、今後、季節講習は受けません」

「お母さん、教えられるんですか?」

 塾で13万円かけても上がらなかった成績を私のような素人が上げられる自信などなかったが、無駄金を使うよりはよっぽどいいと思った。

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