クスリかサプリか

 ADHDの治療として薬を服用することに、私はどうしても気が進まなかった。

 気が進まない理由は、2つ。1つは、副作用だ。副作用は、頭痛・吐き気・食欲不振。特に食欲不振が心配だった。中学1年生で156センチのミツキ。少しでも身長を伸ばすために、食欲不振は避けたかった。

 もうひとつは、服用期間だ。薬が効いているときは頭がすっきりしても、薬が切れるとぼんやりするのであれば、手放せなくなるのではないか。スクールカウンセラーの山崎先生は、ひとまず高校受験まで服用してみてはどうかと勧めたが、本当に止められるのだろうか。

 ADHDの薬を飲んでいる人のブログをいくつか読んだ。食欲不振で10キロ痩せた人。体に合わなくて止めた人。薬が効いているときは劇的に頭がすっきりするが、切れるとぼんやりする人。副作用も薬の効果もなかった人。止めどきが分からなく困っている人。ブログを書いている人だけでも、効果はまちまちだった。

 そして、ブログを読んでいて感じたことがある。それはそれらの人が、ミツキ以上に日常生活に支障をきたしていることだ。

 毎朝親が起こすと寝たまま暴れ、しっかり目覚めたころには自分が暴れたことを覚えていない中学生男子。学校でいじめにあっている小中学生。仕事の段取りが壊滅的な社会人など。本人やその周りの人が泣きたいくらいに辛い状況にある人ばかりだった。

 ミツキは、どうだろう。まず、ミツキ自身はまったく困っていない。友だちはミツキを変わっているおもしろいヤツと思っている。先生はやや困っている。私はミツキの行動に困った点は多々あるが、泣くほどではない。だが、壊滅的な成績を何とかしてほしいとは思っている。つまり、心配なのは成績のことだけだ。
 そう考えると、逆に成績だけのことと思えてくる。勉強は大切だけど、成績を上げるために薬を飲んで、ミツキのいいところを失くしてしまうことの方が問題だ。

 また、ある記事でADHDの薬の歴史は浅く、服用した患者の数十年後のデータがないというのを目にした。つまり、現在服用中で、薬の効果を感じている人であっても、数十年後がいかなるものか分からないということだ。

 私が初めてミツキを他の子どもと違うと感じたのは、ミツキが1歳半、2005年のことだ。その頃は、ネットも書籍も発達障害についてのものは、少なかった。小学校低学年のころは、グレーゾーンと検索してもヒットしなかった。今でこそテレビでも取り上げられ、社会に浸透し始めたが、それまでは認知度は低かった。ということは、薬のデータは確かに十分とは言えないだろう。

 薬以外に何かいい方法はないのか。私は毎日ネット検索をした。

 ある日、同じ口にするなら薬ではなく、食べ物で何とかならないかと思った。例えば、アレルギー性鼻炎には、ヨーグルトや甜茶が効くとか。ビタミンDもいいらしい。そのようにADHDの症状を抑えてくれる食べ物はないだろうかと思った。早速、『食べ物』『栄養』などさまざまなキーワードで検索した。

 今では『栄養療法』が浸透してきて、ネットには溢れるほど情報があり、書店でも多くの関連書籍が売られているが、2016年当時は、あまり情報がなかった。あれこれ検索しているうちに『キレる・多動・不登校 子どもの困ったは食事でよくなる(溝口徹著)』に辿り着いた。

 この本の表紙には『その困ったは発達障害ADHDではなかった!身近な食べ物が心のトラブルを引き起こす『脳アレルギーとは』と書かれている。『脳アレルギー』とはなんだろうと興味をもった。

 『脳アレルギー』は、いわゆる食物アレルギーや花粉症・アトピー性皮膚炎などに関係するアレルギーとはタイプも症状も異なるもので、その特徴は、イライラや多動・不安感といった精神症状を伴う。心をつくっている脳内神経伝達物質であるセルトニンの不足により、脳の栄養不足となり、心の不調和を招いているのだ。

 この脳アレルギーを治すために『遅延型アレルギー』に注目している。一般に私たちが認識しているアレルギーは『IgE』と呼ばれるタイプのもので、症状が出やすく容易に判定できる。それに対して、症状の出にくいタイプの『IgG』『IgA』と呼ばれるものがあり、それが遅延型アレルギーだ。

 例えば、乳製品や小麦類の遅延型アレルギーであれば、それらの摂取を控え、必要な栄養素をサプリメントで補えば脳アレルギーを抑えることができるのだ。

 私は、薬ではなくサプリメントに懸けようと思った。

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