知能検査の結果
12月下旬、冬休みに入ってすぐに知能検査を受け、1月下旬に結果が出た。結果は、私1人で聞きに行った。
まずは、体の検査結果からで、どれも問題はなかった。続いて知能検査の結果だ。
「知能検査ってどういうものか知ってる?」
「はい、何となくは。小学2年生のときに1度受けているので」
「そうなの。その時はなんて言われたの?」
「そのときは、検査結果の表の見方の説明を受けただけで、診断はもらわなかったんです」
「どんな説明を受けたの?」
「うーん。それぞれの検査の結果にバラつきがあるとか。グレーゾーン・・・」
「え! バラつきがあるって言われたの? グレーゾーンて言われたの? どっちなの? 」
私は、また始まったとうんざりした。そこ、そんなに大事なのか? 両方言われた気がするけど、面倒なので、バラつきを選択。
「バラつきですかね」
「うーん、なるほど」
担当医は、急におとなしくなった。どうもこの人は、曖昧な返事が嫌いなようだ。次からの質問には、わかりません、教えてくださいという姿勢で対応しようと思った。
検査結果は以下の通りだった。
- 「全検査値」の数値は正常値だった。
- 正常値というのは、80もしくは85以上とされている。正常ではない数値は、75以下とされている。
- ミツキの数値は正常を80と捉えれば「余裕がある」
85以上と捉えると「ギリギリ」
この評価域をグレーゾーンという。 - ちなみに、この正常値。
「正常」とは言うものの「普通」ではない。
「普通は100」 - 正常値が85の場合で考えると、1クラス30人として、普通(100)の人ばかりの中に入ったとき、30人中25位くらいになる。
- 正常値が80の場合で考えると、1クラス30人として、普通(100)の人ばかりの中に入ったとき、30人中29位くらいになる。
- これは実際の成績ではない。
「成績」ではなく「素質」のことを指している。 - IQとは、「成績」ではなくて「素質」のこと
どれだけがんばる必要があるかの度合いをみている。 - 努力をすればこの順位はあがる
普通にしていたら順位は下の方
何も努力をしなければ、更に順位が下がる
【例】IQが普通(100)の人の場合
素質が30人中15位でも、努力をしなければ実際
の成績は25位とかビリの人だっている。 - 知能検査の重要なポイントとして、言語理解と知覚処理がある。
ミツキの場合、言語理解はとても数値が高い。 - 知覚処理は、とても数値が低い。
国語的な学習は得意だが、見て理解する図形など数学的なものは弱い。 - この数値が離れているので「学習障害」の傾向にある。出来るものは、5とか4になるが、出来ないものは、1とか2になる。学習で得手不得手が極端になる。「でこぼこ」や「バラつき」と言われた所以だ。
- 得手不得手の数値の差が、10くらいであればなんとかなるが、30以上違うとやってもできないことになる。
- 足が悪い人に走れと言っても無理がある。脚が悪い人は車椅子で移動する。
物を使って成果を上げることが望ましい。無理をして歩く練習をしてやらせるというのは難しい。
補助を使って苦手をフォローし、得意分野を伸ばす。 - ある程度の範囲なら努力で乗り越えるが、やはり特別な方法が必要になる。
- 知能は考える力だけでなくて、元になる力が必要で、それが「ワーキングメモリー」である。
記憶力のことで、考える力があっても記憶しなければ意味がない。
ミツキの場合、この数値が低い。
処理速度は、ギリギリの数値。 - 【ミツキ数値まとめ】
言語理解指標は実年齢より高く、15歳強。
知覚推理指標とワーキングメモリー指標は低く、10歳強。
処理速度指標はギリギリで、11歳弱。
平均をとると言語理解指標以外の低い数値の方が主となり、学習障害と言える。 - 知能テストを受ける前に、担任の持田先生と私は、ミツキの生活態度に関するアンケートに答えていた。
18項目の質問があり、各質問に「ない」「ときどきある」「しばしばある」「非常にある」の中から答える。質問の内容は、「適度にしゃべる」「気が散りやすい」などだ。
持田先生の結果は、私のものに比べると、困っている点が多いという結果となった。私は長年の慣れもあるのだろう。
このアンケートの結果も合わせると、ミツキの学習障害は、ADHD(注意欠陥多動性障害)によってワーキングメモリーや処理速度が下がっている可能性がある。 - つまり、ADHDの治療をすれば、全体の数値が上がる可能性がある。
担当医の説明はとても詳しく、しっかりと理解できた。
「結果はこの通りなので、ここからは、お母さんや本人の判断になります。今ここで決めなくて大丈夫なので、今日は聞きたいことがあったら何でも聞いて、家に帰ってよく考えてみてください。もし、薬の服用をするのであれば、また予約を取って来てください」
「ADHDの症状は、大人になると少し和らぐということはありますか?」
「不注意と集中力は、よくなります。けれど、子どものころには成功体験が少ないということになる」
人間形成に大事な子ども時代に成功体験が少ないと、自己肯定感が育たなくなる。だから、薬の服用で不注意を抑えて集中できるようにして、ものごとがスムーズに進む手助けをする。
薬の服用は、脚の悪い人が車椅子を使って移動をスムーズにすることと同じようなものだと、先生は言う。無理をして歩く練習をすることで自己肯定感を損ねるのではなく、車椅子を使ってスムーズに進むことの方が成功体験を得られるのだと理解した。
高校受験を控えている今、どうするべきなのかじっくりと考える必要があった。