葉野ミツキの育て方

そんなトリセツ、あったらいいのに

【こぼれ話】不器用ママ

 私は加工された甘いものが苦手だ。フルーツそのものの甘さが一番おいしいと思う。そもそも我が家には砂糖がない。砂糖がなくても、料理はみりんで十分だと思う。

 私にとってちょうどいい加工された甘いものといえば、ロッテの『小梅だより』とミナツネの『あんずボー』だ。この2つは、できれば常備しておきたい。

 唯一おいしいと感じる洋菓子は、バームクーヘンかスコーン。これ以上の甘いものを口にすると、後頭部の辺りがぽわーんとしてきて、体がだるくなるのだ。

 小さいころからこんな調子の私は、お菓子作りをしようとも思わなかった。

 ミツキの幼稚園時代、女の子の親子を見ては、バレンタインデーは大変そうだと危惧していた。多くの母娘が2月に入った途端にソワソワしだし、バレンタインデー当日の幼稚園のお迎え時には、あちらこちらで手作りの義理チョコ配りが始まる。中にはケーキを焼いてくる母娘もいた。

 ミツキにいただけるのはとてもありがたいことなのだが、ホワイトデーのお返しのことを考えると頭が痛かった。男の子もお返しは、ママの手作り菓子率が高い。

 私は悩んだ結果、買ったもので済ませた。結構な人数にお返しをするので、ホワイトデー仕様のお菓子を買ったら高くつく。中身が個包装の大袋のお菓子を数種類購入して、それをかわいい袋に詰め替えて人数分用意した。

 このラッピングにしても、私が針金リボンで口をするとなんだかショボくなった。

 ちなみに数年後、ミツキの野球関連でお菓子詰め作業をしたときも、私以外のお母さんと私の袋詰めでは出来映えが歴然としていた。

 リオが幼稚園にあがったら面倒なことになりそうだと思っていたが、予想よりも早くそのときがやってきた。

「パパとミっちゃんにチョコレートを作る」

 当時リオは3歳。どこでそんな情報を得たのか不思議に思っていると、プリキュア目当てで買った講談社の『たのしい幼稚園』にチョコレートの飾り付けが載っていた。チョコレート=バレンタインデーとは分かっていないようだが、異性に作ってあげたいという女心は、3歳でも芽生えているのだ。

 まだ早いよぉ。つくづく面倒なことになったと思った。しかし、リオの希望とあらば、ひと肌脱がない訳にはいくまい。

 まずは形から。ミッフィー柄の子ども用のエプロンを購入。リオは、くるくると回って見せた。なんて愛くるしいのだろうか。

 チョコレートを湯せんで溶かして無塩バターと合わせ、プラスチック製のカラフルなスプーンに流し込み、最後にカラースプレーで飾りつけをして出来上がり。いたって簡単。

 ……のはずが、私がスプーンを並べているうちに、リオがチョコレートを舐めてしまったり、スプーンに流し込んだチョコレートが溢れてしまったりとバタバタし通しだった。

 一番大変だったのが飾りつけで、どうも上手くいかない。センスがないのである。

 普段の料理も、どうも盛り付けがイマイチである。以前、私としてはおしゃれなレストラン風のつもりで、いろいろなハーブとレタスを混ぜて大皿に盛り付けたのだが、「なんだか草食わされる感じだな」という夫の言葉に玉砕したことがある。

 リオと私渾身のチョコレートを、我が家の男性陣は、とても喜んでおいしそうに食べてくれた。リオもご満悦である。それからというもの、クッキー、ドーナッツ、パン、キャラ弁とどんどん要求が増加した。

 リオのためとがんばっていたが、どうしても上達しない。まず、材料の計量がどうにも苦痛なのだ。菓子類は、普段の料理のような目分量では上手くいかない。今回はしっかりと計量するぞと息巻いて始めるのだが、途中でプチッと集中力が切れて「おりゃー!」と材料を加えてしまった。

 出来上がるころにはヘトヘトで、その後グッタリと横になる始末。

 リオはそんな私を見かねて、私でなく夫とお菓子作りをするようになった。夫はクレープ作りが上手かった。

 幼稚園に入ったリオにキャラ弁も頼まれた。

 一応努力はしたけれど、やはり無理な話だった。だって、そもそも私が描く絵は、絵心ない芸人並みなのだ。できるわけがない。

 キャラ弁は、ミツキが幼稚園のころから少しずつ流行りだした。ミツキからの要求がないのをいいことに、私はお弁当の話題に触れないように2年間をやり過ごした。だが、頭の片隅にはいつもキャラ弁という言葉がチラついていた。

 そして、幼稚園のお弁当最終日。

「ミっちゃんはキャラ弁作って欲しいと思ったことある? ママ、上手にできる自信なくて作ってあげられなくてごめんね」

 白々しく詫びてみた。

「ママのお弁当はおいしいし、いつもきっちりきれいに並んで入っているから好きだよ。それに、食べ物にベタベタ触られるのは好きじゃないし」

 ヘンなところに潔癖症のミツキらしい返答だ。私はこのミツキに返答に大いに励まされた。おいしく作って、きれいに並べればそれでいいのだ。

 小学生になったリオは、1人でバレンタインチョコ作りをするようになった。基本、私は手伝わないのだが、なんだか気ぜわしい。

 そして、小6のバレンタイン。友だち同士で「チョコ作りは飽きた」という結論に至ったらしい。みんなで買ったものを交換していた。

 ついに私に安穏が訪れた。

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