葉野ミツキの育て方

そんなトリセツ、あったらいいのに

【こぼれ話】たった1つのジャガイモ

 ミツキ小学4年生、リオ幼稚園年長の冬のこと。

 夕飯をおでんにしようと思い、予め買いこんでおいた食材を切り始めたところで、ジャガイモがないことに気が付いた。

「わあ、ジャガイモがない。失敗した!」

 思わず私は声をあげた。

「じゃあオレが買ってきてやるよ」

 夫が声をかけてくれたが、私は少しためらった。

「ありがとう。でも、そうじゃないのよ。あのスーパー安いでしょう? だから、私なるべく行かないようにしてるのよ。行くとつい買っちゃうから。ジャガイモ1つ買いに行くだけのつもりでも、他の物も買っちゃうのよね。パパにお願いしてもきっと同じ結果になると思うのよ」

「じゃあ、オレが行くよ。おでんのためなら行くぜ」

 私と夫のやり取りを聞いていたミツキが言った。

 ミツキは大のおでん好きだ。しかし、練り物はほとんど口にしない。大根、ジャガイモ、こんにゃく、たまごを繰り返し皿に取っては黙々と食べる。

 ミツキの申し出はありがたい。願ってもいないピンチヒッターだ。

「そうだね、あなたに頼むのが一番いいね。1つ198円くらいだと思うから」

 ミツキは500円玉を一枚握りしめ、一緒に行きたがるリオを連れて出かけて行った。

 15分ほどで帰ってきた子どもたちの買い物袋の中身を見て、思わず言葉を失った。

 手提げ袋には個売りのジャガイモが1つだけ入っていた。

「なんで1つなの? 一袋5個入りで198円くらいのジャガイモなかったかな?」

「あったよ。すごく迷った。でもママさっき、ジャガイモ1つ買うのになんとかって言ってただろ? なあ?」

 ミツキが、リオの方を振り返った。

「ママは、ジャガイモ1つって言った」

 リオが自信を持ってきっぱりと言った。

「このジャガイモは、1ついくらだったの?」

「98円。ママが198円くらいだって言ってたから、おかしいなとは思ったんだ。でも、安い分にはいいだろう? その中でも一番大きいのを選んだんだぞ。なあ?」

「うん。一番大きかった」

 ミツキとリオが、ジャガイモ売り場で「ママは1つって言った」と確認しあいつつ、一番大きいものを選んでいる姿を思い浮かべると、なんとも微笑ましい。

「確かに言ったけど、そういう意味じゃなかったんだ。いつもおでん食べてるんだから分かりそうなものだと思うけど、まあ仕方ないか。私の頼み方が悪かったね。2人ともどうもありがとう。それにしても大きなジャガイモだね」

 その晩は、袋入りよりも立派な大きさの、たった1つのジャガイモ四等分入りのおでんをおいしくいただいた。

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