葉野ミツキの育て方

そんなトリセツ、あったらいいのに

薬のすすめ

 塾探しをしているうちに1か月が経ち、2回目のカウンセリングの予約日となった。私は山崎先生に、この1か月間のミツキの学習の様子を話した。

・自分から学習をする意思のないこと

・自分で学習予定表を作るよう説得すると、渋々作り始め
 たが、予定表を作ること自体が上手くできず、頓挫した
 こと

・予定表を一緒に作っても、予定通りに進められないこと

・数学と英語の定期試験のやり直しを何度しても、ケアレ
 スミスが異常に多いこと

 これらのことを話し終えたとき、山崎先生が、ある提案をした。それは、私にとって想定外な提案だった。

「ミツキくんには、薬による体質改善が必要なんじゃないかな」

「え?薬ですか?どんな薬ですか?」

「ミツキくんはね、脳の神経の伝達が上手くいっていないんだと思います。イメージとしては、脳の神経がギザギザ尖った感じ。ギザギザしていて、脳の神経の伝達がスムーズにいかないから、予定表を作れなかったり、守れなかったり、ケアレスミスが多かったりするわけです。これから勉強も難しくなって、やらなければいけないことも増えるでしょう。だから、脳の神経の尖った部分を滑らかに落ち着かせる薬を飲んでみてはどうかと思うんです。これから高校受験もあるので、ミツキくんも落ち着いた状態で過ごせたら楽だと思うんです」

 先生は正論を言っていると理解はできた。だが、すぐには受け入れられないほどショックだった。小学2年生で軽度発達障害の可能性を指摘されたとき以上にショックだった。なぜなら、軽度発達障害は、療育や周りの人間のサポートによって何とかなると、私は自分に言い聞かせてきたから。ところが、薬を使わなくてはならないほど難しいものだったなんて。

 発達障害は、治す治さないの問題ではなく、その人の個性だ。難しい面もあるけれど、個性として受入れようとすることが正しいと思っていた。だが、そうではないのだ。そんなのやっぱり現実的ではないのだ。今、ミツキは恵まれた環境にいるけれど、いずれもっと広い世界に出たら、理解してくれる人間ばかりではない。

 受験のこともある。これだけケアレスミスが多かったり、集中力散漫だったりでは、受験など上手くいくわけがない。ミツキにとって一番いい方法はなんだろう。ミツキがいきいきと幸せに生きられるようになるには、やはり薬の服用が必要なのだろうか。

「急な提案だから戸惑うと思いますので、ゆっくり考えてみてください。ちなみに、薬の服用に関しては、あくまでも小児科医の診断が必要ですから、検査を受けてからということになります。小学生のときは、小児科医の診断まではしていないんですよね? でしたら、薬の件は置いといて、今のミツキくんの状態を診断してもらうだけでも意味があるかもしれませんよ」

 小児神経科を受診するよう勧められた。

 診断をしてもらうことに本当に意味があるのかよく分からなかった。でも、今ここで何もしなければ、何も変わらない。何か行動を起こしたら、何かが変わるかもしれない。ならば検査を受けてみよう。

 小児精神科の病院は、近くにあった。予約センターに電話をすると3回も長い保留にされたのち、初めは予約可能な雰囲気だったが最終的にすべて覆され、紹介状がないと予約は取れないからと切られた。

 中学校の養護の本宮先生に相談すると、中学校の校医の病院で紹介状を書いてもらってはどうかと教えてくれた。

 まずは校医の木下医院に行こうと思ったとき、ミツキを連れて行くとこに気が付いた。ミツキに何と説明したらよいのだろうか。

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