学習について

 ミツキの5,6年担任の松本先生は、小学生時代の学習の大切さを話すことが多かった。
 小学校の教諭になる前は、定時制高校の講師をしていたらしい。定時制高校で授業をする中で、基礎学力が定着していないことが、高校での学習の妨げになっていると感じたのだそうだ。基礎学力を定着させるには、ただ詰め込むだけの暗記は意味がない。それだけに、松本先生の授業はスライドを使ったり、ディスカッションの時間を多くとったり、とても分かり易く丁寧な授業だった。

 ミツキの通知表は、1年生のころからずっと、全項目が3段階評価の真ん中「良」ばかりだった。1年生で初めて通知表を見たときは「優」がひとつもないことにがっかりした。しかし、通知表の端の方に「学習の記録は、学年の目標に達していれば『良』に○をつけます」と書かれているのを見て安心した。

 私が子どものころの通知表は相対評価だったので、一目でクラスでの自分の学力がどの程度なのかをまざまざと見せつけられるような気がした。だが今は、絶対評価である。学年の基準に達していれば「良」なのだから、これでいいのだと納得した。

 ミツキが1,2年生のころは、宿題や通信教材をするにも大変な苦労を要した。学習障害を心配する時期もあった。しかし、3年生以降は気にするほどではなくなった。通信教材で応用問題が出ると、何度解説しても理解できなかったが、学校で受ける基礎的なテストであれば点数は良かった。だから、通知表の端に書かれた文言通り、納得の「良」だった。

「優」を取るには、授業態度や提出物など学校生活全般で高評価を得る必要がある。積極的に授業に参加しているか。提出物を期限までに提出しているか。提出物の内容も然り。小テストの積み重ねも然り。

 ちなみに、リオの成績表は「優」がたくさんある。確かに、リオの学習に私が付きっきりになることはないし、不安を感じることもない。だが、発展問題となると、リオもミツキ同様出来は良くない。業者のカラーテストだけを見たら、ミツキの方が良い点数が多かった。それでも「優」が多いのは、リオのやる気のなせる業だと思う。リオの担任の先生は「リオさんを見ていると思わず応援したくなります」と言った。リオは、常に何事にも前向きに楽しんでチャレンジする子だ。手先も器用で提出物も凝っている。

 通知表とはテストの点数だけではなく、その人となりの総評価ということになる。

 ミツキは、業者のカラーテストさえ良い点を取れていればいいと考えているようで、それ以外は評価に値する行動をしなかった。
 そんなミツキも、5,6年生の成績は上昇傾向にあった。低学年のころから得意な理科と社会に加え、松本先生の丁寧な授業のおかげで参加する意欲が出た他の教科も、通知表には「優」が付くようになった。

 6年間、付きっきりで家庭学習を進めてきた。漢検にもチャレンジしてきた。毎年2月の初めの試験を受けるために、半年前から準備を始めた。
 ミツキの覚え方は、1つの漢字をただノートに何度も書きなぐるだけだった。ノートに書いている間、ミツキの脳は停止していて、勝手に手が動いているだけの状態だ。結果、全く頭に入っていなかった。意味のない作業になってしまうので、次のような学習方法を教えた。

①見開き1ページをテストする

②丸付けをして、間違えた漢字の横に日付を書いておく

③間違えた漢字のみピックアップして、5つずつ声に出し
 ながら暗記→テスト。これを繰り返す。

④もう一度見開き1ページをテストする

⑤①~④を繰り返し完璧にする

⑥数日経ってから、日付の書かれた漢字のみ再テスト

 これを繰り返しやると、サクサク覚えられ、合格した。ただし、すぐに勉強方法を忘れてしまうようで、放っておくと漢字の書きなぐりを平然と繰り返した。
 何度も教え直す必要があり、毎度、まるで初めて聞いたかのように振舞うミツキが不思議でならなかった。

 中学生になったら、自分自身で計画的に学習してほしかった。そのために、小学生のうちに学習習慣と学習方法をしっかりと身に着けさせることを1番の目標に掲げてきた。しかし、一向に身に着かない。何度勉強方法を教えても、元の木阿弥だった。

 

 言い始めると悩みは尽きないが、低学年のころに比べれば格段に楽になったことも確かだ。あれほど悩んだミツキの発達障害のことは、私の記憶の片隅へと追いやられていった。むしろ、個性的で唯一無二のおもしろい魅力的な少年として捉える様になっていった。

 ミツキは、気の合う仲間やたくさんの理解ある人々に囲まれて楽しい小学生生活を送ることができた。不安はまだまだあるが、周りの人への感謝の気持ちを忘れず、これまでの経験をしっかりと生かして欲しい。

 私のできることはすべてやってきた。中学生になったら思春期という新たな壁が立ちはだかるだろう。親の言葉を素直に聞けなくなるだろう。

 これからは、ミツキ自身が能動的に活動することが大切なのだ。

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