奇人変人

 幼稚園での活動の中で、次第に気の合う子ども同士で関わる時間が増え、秋ごろにはクラス内にいくつかの仲良しグループができた。

 ミツキは、俊足のダイスケくん、大人しそうに見えて実は活発なシュウちゃん、賢いフウタくんの4人組だ。

 幼稚園や公園で遊ぶいくつかのグループの様子を見ていて、ミツキたちの遊び方は他とは違うなと感じていた。

 他の子どもたちの遊びは、縄跳び、かくれんぼ、鬼ごっこ、泥団子作りなど、定番の遊び。

 それに対してミツキたちの遊びは、次の通り。

 うろうろと公園の散策。木に登って葉を落とす。誰から逃げているのか不明な追いかけっこ。破壊がメインの泥団子作り。深い穴掘り。大きな石を叩き割る石切り作業。ジャングルジムの上でのひなたぼっこ。何が楽しいのか、何を目的としているのか、理解に苦しむものばかりだった。これらの遊びを牽引しているのは、ミツキだった。

 奇想天外。おもしろい発想。新しい発見。風変わりでいいじゃない。そう思うようにしていたが、本当は他のグループのように、定番の遊びもしてほしかった。

 ときどき、他のグループの子と一緒に遊ぶこともある。そんなときは、相手に合わせて定番の遊びを楽しんでいた。だったら、4人で遊ぶときも定番の遊びをすることがあってもいいはず。しかし、4人のときは、決してそうはならない。

 私は3人の子どもとママに申し訳なく思った。ところが、子どももママも不思議と喜んでいた。ミツキと一緒でないと出来ない遊び、そんな風に捉えてくれていることが、ありがたかった。

 ミツキは「好奇心旺盛な子」「頭の回転が速い子」と誉められることが多かった。考えるより先に行動するところや、おしゃべりが達者なところを見てそう思うのだろう。

 確かに、とても幼稚園児とは思えない口をきいた。旅先で入った飲食店の大将に「このお店の物は何を食べてもおいしいですね」と話しかける。気をよくした大将が「大したもんだね。ぼくは大物になるよ」と言っておまけをくれる。そんなことは日常茶飯事で、どこにいっても「頭の回転の速い子」と言われた。

 じじばば、そしてパパは喜んでいたが、普段の学習状況を知っている私は、そんな風には思えなかった。コミュニケーション力には長けているが、どこかアンバランスに感じていた。

 なにが、どこが、とはっきりとは言えないが、どうも風変わりなミツキ。私は日に日に子育てが不安になっていった。

 ある日、インターネットの広告に無料の姓名判断が載っていた。ミツキがまだお腹にいるころ、姓名判断の本を図書館で借りてきた。しっかり調べて、名前は画数の良い「翔太」に決めていた。しかし、生まれた赤ちゃんが光っていることに感激して「光る希望」でミツキに急遽変更したのだ。ミツキの画数はどうなのだろうか。

 無料なので調べてみた。姓と名を各ボックスに入力し、鑑定ボタンを押した。各文字の画数と天格、人格、地格、総格、外角の数や吉などの運勢が書かれている。そして、総評価として「奇人変人」とだけ書かれていた。

 笑ってしまった。確かに当たっている。

 せっかく奇人変人を授かったのだ。ミツキが胸を張って奇人変人として生きていけるようにサポートしていこう。すべきことをしっかりとできれば、むしろそれが利点となることがあるはずだ。

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