幼稚園

 ミツキは1年間のプレ幼稚園を卒園し、2年保育の公立幼稚園に通うこととなった。

 プレ幼稚園の経験虚しく、また一からやり直しになるかもしれない。私から離れられない可能性、泣く可能性、入園式で席を立ち歩く可能性、他の子どもとなんらかの小競り合いが起きる可能性など。私は覚悟を決めて入園式に向かった。

 園に着いて靴を履き替えるとすぐに、子どもは教室、保護者はホールへと誘導された。ミツキは、先生に促されるままにあっさりと教室へ入っていった。ミツキの成長に驚いた。むしろ、私の方が後ろ髪を引かれる思いだった。

 ホールに入り決められた席に着くと、同じクラスに児童館やプレ幼稚園での知り合いが多数いることが分かった。ミツキも教室に入ってホッとしたことだろう。

 5歳児にとっては長時間に感じるであろう入園式だが、ミツキは神妙な面持ちでジッと席に座っていた。

 私には神妙な面持ちに見えたが、実際のところは周りの様子を伺い、ミツキなりに先生や他の子どもたちの雰囲気を感じ取ろうとしていたようだった。
 そして、ミツキはすぐに幼稚園が気に入った。

 この幼稚園の魅力は、広い園庭と自由時間の多さにあった。自由時間は、教室で工作をするもよし、ホールで大きな積み木を使って遊ぶもよし、園庭をひたすら走りまわるもよし、砂場で遊ぶもよし。そこには、ミツキの求める自由さがたくさんあった。

 もちろん集団行動の時間もあったが、プレ幼稚園に比べると自由時間の割合や、その自由度が格段に大きかった。

 ミツキの一番のお気に入りは、園庭の端にある高さ1メートルほどの土の山。入園してすぐに仲良くなったダイスケくんとひとつのフラフープに入り、車掌と乗客になって猛スピードで山を駆け下りる。乗客は車掌の頭で前が見えず、どこに行くかも分からないので、いつも激しく転倒した。

 ミツキとダイスケくんの膝はいつも擦り傷だらけだったが、楽しさが痛みを上回っているようだった。

 保育時間終了後も40分間園庭で遊ぶことができるのも良い点だった。さらに、園庭開放終了後は園の周りの公園でさらに遊び、5時のチャイムがなってようやく公園を後にした。

 ようやく帰れるとほっとするのも束の間。帰り道が同じ方向のシュンくんと遊びながら帰るので、一向に家に着かない。幸か不幸か、家から幼稚園の道のりはずっと川沿いの緑道なので、遊び場に事欠かないのだ。大人の脚で15分の道のりを50分以上かけて帰る。

 朝の登園も然り。9時登園のところ、8時には家を出なければならなかった。

 1歳になったばかりのミツキの妹のリオを連れての送り迎えは、いつもバタバタで大変だった。しかし今思えば、親子がともに幸せを分かち合う至福の時間だったと懐かしく思う。

 子どもたちの関わりを間近で見ることができて、ママたちと成長を喜び合うことができたのだから。

 それから、良かったことがもう一つ。2年間の通園で、私の視力は0.5から1.2になった。

 毎日緑道の四季折々の美しい緑を見ることにより、視力が回復したのだ。緑が本当に目に良いのだと実感した。

 

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