きかんしゃトーマスPart 1

 2歳少し前から3歳半の間、ミツキを夢中にさせたのは、『きかんしゃトーマス』だった。トーマスのビデオを観るときのミツキは真剣そのもので、何度同じものを観てもまったく飽きる様子がなかった。それどころか、毎回まるで初めて観るかのような興奮ぶりだった。

 一緒に遊ぶ友だちもトーマスが好きで、トーマスにちなんだ遊びをした。

 ガチャガチャで購入したトーマスのキャラクターの機関車を砂場に持っていく。砂場に山を作り、線路に見立てた線を書いて機関車を走らせる。

 大抵の子が主人公の『トーマス』を使いたがった。緑色のかわいらしい『パーシ―』は2番人気で、高慢な『ゴードン』やナルシストの『ジェームス』はあまり人気がなかった。もっとも性格の良い『エドワード』も人気で、こんな小さな子でも性格の良し悪しの区別をしているのだと感心した。

 ミツキはというと、レギュラーの機関車にはあまり興味が無いようだった。ミツキが一番好きなのは、超レアキャラクターの『いわのボルダー』で、もはや機関車ではなかった。

 ボルダーとは、ソドー島(トーマス達が住む島)にある高い山の頂に鎮座している、自然に出来たようには見えないほどほぼ真球の岩のことだ。何か霊的なものが宿っているらしく、いかつい顔が浮かび上がっている。第130話『いわのボルダー』は、その題名通りボルダーが主役の話だ。

 ボルダ―のいる山に採掘場が作られたことにより、山を荒らされて怒ったのか、意思を持ったように猛スピードで転がりだすボルダー。採掘路線を暴走し機関車たちを散々追い回した挙句、操車場にある倉庫に突っ込み炎上。

 ミツキにとっての神回だ。ミツキの砂場遊びの楽しみは、砂でだんごを作ってボルダーに見立てては、友だちの機関車を追い回すことだった。子どもたちは皆、トーマスでお馴染みの接触事故が楽しくてたまらない。みんな大興奮で、いつの間にか全員がだんごを作ってボルダーになってしまう。最終的にはただの砂遊びだ。

 ママたちも子どもと一緒になってビデオを観ているので、キャラクターについて詳しかった。ある日、子どもたちにトーマスカルトクイズを出したところ、大いに盛り上がった。ヒートアップしたあるママが超カルト級の問題を出したところ、子どもたちは次々と脱落していった。しかし、ミツキだけ全問正解。子どもやママたちから羨望のまなざしを向けられる中、ミツキは「わかって当たり前でしょ」とでもいうような涼しい顔をしていた。

 公園でビューしたばかりの1歳半のころは、「近所の植え込みつんつんつん」行動でなかなか公園に辿り着けない上に、公園に着いても「隅の植え込み散策」行動や「遊具使用法不適当」行動によりなかなか友だちと交われないままタイムアップで帰宅していた。

 それが2歳2か月辺りから、子どもたちの体力がつき始めたことにより、公園でお弁当を食べて遊び時間を2時くらいまで延長できるようになると、友だちと交わる時間が確保できるようになった。

 午前中のミツキの行動は相変わらずだったが、お弁当の時間からは友だちと楽しく過ごすことができた。

 こうしてミツキは、きかんしゃトーマスを通して友だちとの関わりを深めていった。

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