ミツキとじいじ

 ミツキは外遊びが大好き。しかし、妊娠中は思ったように外遊びに連れていってあげられなかった。そんな私を見兼ねた実父が、ミツキの遊び相手になってくれた。

 実父は毎日1時間半かけて、午後3時にミツキに会いにやってきた。ミツキは昼食後の昼寝を済ませて、今か今かとじいじの到着を待つ。ときには、昼寝が長引いてまだ寝ていることもあったが、玄関チャイムが鳴ると跳ね起きた。

 雨の日も風の日も散歩の時間は2時間と決まっていて、きっかり5時に帰ってくる。

「ゆうがたー、ゆうがたー、ゆうがたー」

と、ミツキ作詞作曲の歌が遠くの方からかすかに聞こえてきたら玄関の鍵を開けておく。ミツキは重たい鉄のドアを元気よく開けた。

 周りのママたちに比べたら、私は子どもが衣服を汚すことを容認している方だと自負していた。しかし、そんな私が引くほど、ミツキは全身泥だらけで帰ってきた。いったいどんな遊びをしたのだろうかと不思議なくらいだった。

 ミツキが帰ってきた途端に玄関がザラザラになるので、即浴室へ。浴室で服を脱がすと、ポケットやらズボンの裾の折り返しやら、あちこちから砂が出てくる。以来、新しく買う服選びに慎重になった。

 じいじとの入浴を済ませた後は、お楽しみの夕食。ミツキのお楽しみは夕食そのものではなく、じいじとのお決まりの会話だった。

「じいじ、モグモグするとどこいくの?」

「お口でモグモグした食べ物はね、喉を通って、食道通って、胃を通って、十二指腸通って、小腸通って、大腸通って、お尻の穴からぽん!」

 じいじがミツキの体を順番になぞる。日によって口調を変えて言うので、飽きることなく毎日毎日同じ会話が繰り広げられる。特に最後の「お尻からぽん!」が大のお気に入りで、ミツキは毎回笑い転げた。

 この食前の儀式は、なんと2年も続いた。

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