かわいすぎるミツキ

 ミツキは、2,230グラム・45センチの小さな赤ちゃんだったが、とても元気で4日後にはGCUを出て一般病棟で私と一緒に過ごせるようになった。

 私の退院日が決まり、医師からはミツキも一緒に退院してかまわないが、判断は親にまかせると言われた。離れたくない気持ちと、こんなに小さいのに退院してしまって大丈夫なのだろうかという不安の狭間で悩んだ。その時のミツキの体重は、2,100グラム。医師の話では、赤ちゃんは産まれてから排泄などもあり、一時的に体重が減るので問題はないとのことだったが、それでも私は心配だった。

 しかし今思えば、一緒に退院すればよかった。

 ミツキに会えない時間もおっぱいは張る。自分で搾乳・冷凍したものを病院に持って行くのだが、この搾乳がけっこう難しい。直接授乳することが、どれだけすばらしいことか。離れて過ごした1週間で私のおっぱいはほとんど出なくなり、ミルクで育てることとなった。

 無事退院してからは、それまでの心配事がまるで嘘のように幸せな日々の連続だった。

 かわいい、かわいすぎる。ミルクを飲みお腹がいっぱいになると、目が虚ろになりウトウトし始める。お風呂に入れると、口を少しとがらせて「ほー」と言っているような顔つきになる。寝ても、笑っても、泣いても、何をしてもかわいい。

 学生時代、ある友人が言っていたことを思い出した。この友人はことあるごとに学校をさぼっていた。私立の中でも授業料が高いことで有名な短期大学に通っていた私は、授業をさぼるなんて親に申し訳なくて、とてもできなかった。何かと理由をつけては授業をさぼる、宿題をやってこない、ノートをとらない友人をみて、いったいこの子はどういう神経をしているのだろうかと思っていた。ある日率直に彼女に質問してみると、驚きの回答が返ってきた。

「子どもってね、3歳までにその愛くるしさで親に対しての一生分の親孝行を済ませているんだって。だから、私ももう親孝行済みだから学校さぼるくらいなんでもないことなんだよ」

 なんだ、このぶっ飛んだ考え方は。驚き過ぎて、それ以上何も言えなくなった。きっぱりと言い切る友人に、不覚にも潔ささえ感じてしまった。

 あれから十数年、かわいいミツキを抱いていると、友人の主張は決して間違えではなかったと思えて仕方がない。

にほんブログ村 子育てブログへ
にほんブログ村